2023年9月場所個別評価 朝乃山

 今場所は西前頭2枚目だったが9勝6敗という成績だった。前半戦は初日から役力士との対戦が続いたが4勝4敗で折り返した。そして後半戦は白星を伸ばすと13日目に勝ち越しを決めた。千秋楽は勝てば優勝という熱海富士との一番だったが寄り切りで破り、9勝目を挙げると同時に熱海富士に優勝を決めさせなかった。また元大関としての意地を見せた。

 7月場所で左上腕二頭筋を部分断裂し、7月場所後の夏巡業は休場していたが8月19日の巡業から復帰した。しかし8月27日の巡業で右足親指を痛め、相撲を取る稽古ができないまま9月場所を迎えていた。

 ということで内容に関しては左腕はそれなりに使えていた一方、右足は踏ん張りが効いておらず、朝乃山にしては珍しく転がって負ける相撲が多かった。今場所を象徴していたのが三大関に勝てなかったということである。貴景勝戦は押し込まれた後で叩かれたということで完敗という内容だった。霧島戦は左上手は取れなかったものの右を差し、得意の四つに組んだという意味では勝ってほしかった相撲である。結局長い相撲となり、最後は外掛けで転がされた。豊昇龍戦は先場所左上腕を痛めた因縁の相手だったが右を差し、前に出ながら左上手を取った。しかし土俵際で右下手投げを打たれて逆転負けした。怪我の影響はあるものの、復帰前の状態に戻っているとは言えない。普通に考えれば大関に負けても全く問題ないのだが、元大関で横綱候補と言われていたのでどうしても物足りなさが残ってしまう。怪我が相次ぎ、大変なのは分かるが照ノ富士も膝の痛みを乗り越えて横綱に上がっており、大関復帰を目指すというところでは今が踏ん張りどころである。

 9月場所後の秋巡業には参加し、10月7日には相撲を取る稽古を再開したようだ。またこの時点では「足は大丈夫だけど腕は気になる」と語っており、左上腕はまだ完治していないようである。今度は万全の状態で場所初日を迎えて欲しい。しかし28日の稽古で左足を痛め、巡業を離脱したという情報が入ってきた。おそらく休場はないと思うが調整遅れは避けられそうにない。

 11月場所は東前頭筆頭が予想されるが二桁勝利を目指したい。そして11番以上勝てば小結ではなく関脇も見込めるので貪欲な姿勢で白星を重ねたいところだ。まだ復調はしていないものの馬力は健在であり、三関脇に代わって大関候補の一番手になる可能性も十分ある。今求められているのは技量ではなく精神力であり、その真価が問われていると思うので頑張って欲しい。