2023年9月場所を振り返って 優勝争い その10

 さて熱海富士が負けたのでこれより三役が「消化試合」ではなくなった。そして誰が優勝するか分からなくなり、観ている方も改めて緊張感が出てきた。

 まずは北青鵬と豊昇龍の一番である。北青鵬が勝てば決定戦進出となる。相撲は立ち合いからすぐに北青鵬が右上手を取った。しかし豊昇龍は両差しとなり、廻しを取ると北青鵬の上手をすぐに切った。すると豊昇龍は内掛けで揺さぶり、北青鵬の左足が前に出ると同時に再度右内掛けを見せるとそのまま北青鵬の足を跳ね上げ、バランスが崩れたところで今度は右足を取って北青鵬を転がした。また北青鵬の胸を頭で押しており、三所攻めのような形となった。三所攻めとは相手の片足を外掛けまたは内掛けで攻め、もう片方の足を手ですくい、相手の胸を頭で押して倒す技である。相手の身体の三箇所を同時に攻めることからその名が付いた。以前は現大相撲中継の解説者の舞の海さんが得意としていた。結局決まり手は渡し込みとなった。

 豊昇龍はカド番を回避し、ホッとしていると思う。三所攻めを見せたあたりは何としても勝ちたいという強い意志の表れである。北青鵬を倒すために最善策を取ったという感じである。

 一方北青鵬は右上手を切られたことが全てである。役力士はスピードは速いだけでなく、廻しを切る技術も持っている。平幕や十両力士のようなわけにはいかない。確かに2メートルの長身とリーチの長さは魅力だが、今後に向けては前に出る圧力の強化が求められる。

続く