徳勝龍引退について 幕尻優勝 その2

 そして当然だが記録ずくめの初優勝だった。奈良県出身の力士としては1922年1月場所の鶴ヶ濱以来98年ぶり。幕尻での優勝は2000年3月場所の貴闘力以来20年ぶり2例目。その中でも幕内の番付で自分の下に一人も力士がいない例は史上初。西前頭17枚目での優勝は歴代史上最低地位での優勝。再入幕での優勝も史上初となった。また三役経験のない力士の優勝は、大相撲が年6場所制となった1958年以降では史上4人目となった。

 この優勝は史上最大の大番狂わせと言っていいと思う。最近は平幕優勝が多くなったが、徳勝龍と似たようなケースでは1984年9月場所で西前頭12枚目で優勝した多賀竜が思い浮かぶ。しかし多賀竜はその前に関脇まで番付を上げていた。また14日目は綱取りだった大関・若嶋津を破っており、11日目は関脇・大乃国に勝っていた。一方徳勝龍は先述の通り三役経験はなく、上位力士と対戦したのも一場所だけである。そして役力士との対戦は千秋楽の大関・貴景勝戦だけだった。多賀竜の優勝もインパクトがあったが、徳勝龍の優勝はそれ以上の衝撃だった。また今後徳勝龍のような優勝力士が出てくるかと言えば私は当分出て来ないだろうという考えである。

 そしてもう一つ、2020年1月と言えばコロナが蔓延する直前であり、3月場所以降は感染対策のため無観客となったり、優勝パレードが中止なったりした。その点では徳勝龍は普通に大勢の観客に喜ばれ、優勝パレードもできた。結果論だがとてもラッキーだったのは確かである。

続く