2023年7月場所個別評価 貴景勝

 今場所は全休した。来場所は7度目のカド番となる。5月場所は強行出場し、8勝7敗で何とかカド番を脱出したが、5月場所後は相撲を取る稽古ができておらず、休場となった。そして相撲協会に「両膝半月板損傷により、7月6日から約3週間の安静加療を要する見込み」との診断書を提出した。今場所はカド番ではなかったので無理をする必要はなく、この判断は妥当である。

 そして個人的に気になったのが7月場所後の動向である。夏巡業は休場していたが8月6日から巡業に合流した。6日の巡業では公開稽古には参加しなかったものの、十両の貴健斗相手に立ち合いを確認するなど入念に体を動かし、霧島との取組もこなしたようだ。本人は膝は良くなっていると語っており、巡業でどれだけ状態を上げていけるかがポイントになりそうである。

 9月場所は再度のカド番となり、厳しい場所となりそうだが何としても勝ち越して大関の地位を守りたい。仮に負け越して関脇に陥落してもその場所で10勝以上を挙げれば特例で大関に復帰できる。しかし今の貴景勝にその力は残っていない。また過去を見ても特例復帰のハードルは高く、勝ち越すことはできても10番は勝てないといった力士が多い。また本人にその自覚があるからこそ7月場所は休場をするという決断をしたと私は思っている。状況的に見れば厳しいのは確かである。しかし貴景勝は大関で二度優勝しており、最近の大関の中では強い大関である。また相撲に対する姿勢も貪欲であり、御嶽海や正代のように大関の座を簡単に明け渡すとは思えない。若手力士が伸びてきているのは事実だが、経験に関しては貴景勝に一日の長がある。勝ち越すと同時に長年大関を務めてきた自負もあると思うので頑張りに期待したい。