2023年9月場所個別評価 妙義龍

 今場所は東前頭13枚目だったが10勝5敗の好成績だった。前半戦は6勝2敗と白星先行で折り返した。そして後半戦は9日目から連敗するも13日目に勝ち越しを決めた。千秋楽は金峰山を寄り倒しで破り、2年ぶりの二桁勝利となった。

 内容に関しては二本差す相撲が多かったが最近の妙義龍は相手に何をしてくるか分からないというイメージを持たせており、それを活かした上手い相撲を取っていた。初日の碧山戦は突き合いから懐に入って寄り切った。相撲内容は良かったのだが、碧山が警戒しており、腰が引けたような感じで相撲を取っていた。5日目の北青鵬戦は相手の左上手狙いを右ハズ押しで封じた。そして二本差すと吊るような形で寄り切った。北青鵬対策のお手本のような内容だった。千秋楽の金峰山戦は立ち合いで相手が四つに組みに行くことを見越して一気に押し、二本差すとそのまま寄り倒した。若手時代の相撲を観ているようだった。さすがに根こそぎ持って行く相撲は厳しいが、相手が見ていくようだと一気に運べるくらいの力は持っている。まさに変幻自在の相撲を取っており、今後も相手に嫌がられる存在となりそうだ。

 一方本人が語っていたように勿体無かったのが3日目の熱海富士戦である。右を差した後に珍しく右で廻しを引いて相手得意の左上手を許さない。すると熱海富士が妙義龍の右を極めにきた。そこを右から出し投げを打ち、寄って前に出たところを小手投げで転がされた。攻防のあるいい相撲だったが終始妙義龍の流れだっただけに惜しい一番だった。それでも相手に自分の相撲を取らせておらず、絶妙な相撲を取っていた。ベテラン健在という言葉がピッタリである。

 11月場所は東前頭9枚目となったが再度の勝ち越しを期待したい。また最近は平幕下位での土俵が続いており、私としては平幕上位で相撲を取って欲しい力士である。10月で37歳となったが気力も含めてまだまだ衰えておらず、今後も存在感を発揮しそうである。