2023年5月場所個別評価 若元春

 今場所は10勝5敗の好成績で初三賞となる技能賞を受賞した。5連勝スタートを切り、前半戦は6勝2敗で折り返した。そして後半戦は11日目に北青鵬に勝って勝ち越しを決めると14日目は貴景勝を押し倒しで破り、二場所連続三役での二桁勝利となった。ということで7月場所は大関獲りの場所となる。

 内容に関しては左四つの相撲は安定感があった。上体の力が強く、また左四つの形がいいので組み止めれば安心して観ていられる。そしてもう一つの特長は土俵際での粘りである。3日目の正代戦は左四つに組み止めるも正代に二本差され、一気に寄られた。そして左を巻き替えようとしたがそれができず、俵に詰まったタイミングで突き落としに切り替え、逆転が決まった。11日目の北青鵬戦は左四つに組み止めたものの右上手を取られ、長い相撲となった。しばらく動かない展開となったがそれでも左を深く差し、頭を付けるなど少しずつ有利な体勢を作った。最後は北青鵬に寄り立てられたものの北青鵬を持ち上げ、左に振り回すような形でうっちゃりを決めた。弟の若隆景もそうだが、相撲センスがあり、簡単には負けない力士である。北青鵬は身長2メートル4センチのモンゴル人であり、外国人相手に組んでも負けないというのはやはり魅力がある。

 そして今場所は押し出しで二番、押し倒しで一番勝っており、廻しにこだわらず、前に出る相撲が多かった。また立ち合いでかち上げを多く使っており、攻めや立ち合いに工夫が見られた。できればもう少し押す力が欲しいが組み止める力は同じ一門で新大関となった霧島以上であり、霧島レベルの押し相撲までは必要ない。土俵の外まで出さなくとも押し込むことができれば左四つの型は持っており、有利な形に持ち込めるのは明らかである。

 7月場所は大関獲りであり、12勝が目安となりそうだ。しかし焦る必要はない。平幕上位に番付を上げてまだ一年である。普通なら壁にぶつかり、苦労するところである。しかし関脇に番付を上げ、二桁勝利を挙げている。それだけで凄いことである。また本人も自覚しており、まずは関脇の地位で二桁勝利を挙げることを目標としているみたいだ。相撲を観ても勝負にこだわるというよりも自分の力を試すような相撲を取っている。個人的にはあと半年くらいかけて力を付けるとともに経験を積んでから大関に上がった方がいいのではないかという考えである。また同門ということで霧島とはよく稽古をしているようであり、大関と稽古ができる環境にあるというのも心強い。確かに大関獲りの場所ではあるが、今まで通り自分の力を試すつもりで相撲を取って欲しい。そして力が付けば自ずと大関に上がれると思うので今後に期待したい。