2023年5月場所個別評価 豊昇龍

 今場所は11勝4敗の好成績だった。前半戦は6勝2敗で折り返した。そして後半戦は同じく関脇の若元春と照ノ富士には敗れるも12日目からは白星を並べた。千秋楽は場所後の大関昇進がほぼ決まった霧馬山を下手投げで破り、存在感を発揮した。またこれで11勝目となり、二場所連続関脇での二桁勝利となったので来場所は大関獲りの場所となった。

 確かに11勝だが、前半戦は不戦勝による白星が二つあり、ラッキーだった部分もある。しかし1月場所で左足首を痛めた影響が残りながらも相手をさばくような相撲で白星を挙げており、地力を付けてきているのは確かである。特に良かったのがやはり千秋楽の霧馬山戦である。立ち合いから左を深く差すと右も差し、万全の体勢を作った。そして吊り上げるとそのままの流れで下手投げを打ち、霧馬山を転がした。大関昇進を決めている力士に勝ったことで11勝という数字が評価されたという感じである。場所全体で見れば一気に前に出て勝った相撲は少なく、物足りなさが残る。しかし個人的には一気に前に出られなくても勝てる力が付いてきたことを評価したいという考えである。

 7月場所は大関獲りの場所となるが、ノルマの目安は12勝である。豊昇龍は幕内で12勝以上を挙げたことはなく、ハードルは高い。しかし去年の11月場所で見せた一気に押し込む相撲が取れれば私は可能性はあると思っている。そして痛めた左足首の状態が回復すれば相撲内容が良くなることも見込める。ただ年齢は24歳と若い。霧馬山の大関昇進は悔しいかもしれないが、勝手に自分を追い詰めるのではなく、力を付けてから上がって欲しいところだ。大関というよりもまずは二桁勝利を挙げ、地力を強化したい。いずれは協会の看板を背負う力士であり、成長が非常に楽しみである。