2023年5月場所を振り返って 優勝争い その2
9日目。照ノ富士は1敗の明生との対戦だったが敗れ、初黒星を喫した。しかしこれは横綱が、というよりも明生が素晴らしい相撲を取った。立ち合いから当たって押し込むとすぐに右へいなし、間隔が空いたところで右を差した。その後すぐに肩透かしで右へ回り込むと左を差して横綱の上体を起こし、そのまま寄り切った。明生にとっては殊勲の初金星となった。ただ三役時代に照ノ富士に2回勝っており、照ノ富士キラーと言ってもいい力士である。負けた相撲でもあと一歩と言った内容もあり、その経験を活かした見事な一番だった。明生が照ノ富士に勝てた要因は2つある。1つは立ち合いの圧力である。立ち合いで押し込めたからこそ次の攻めが出しやすくなる。逆に押し込まれるようなら勝ち目はゼロに等しい。そしてもう1つは横への動きである。左右へいなすスピードは角界でもトップクラスである。しかしこの動きも立ち合いから相手を押し込んでこそ活きてくるものである。明生もそれを分かって相撲を取っており、好感が持てる。また右を差した後すぐに右に回り込んだのも勝因である。差しただけで止まってしまうと横綱に抱えられ、動きを止められるからである。いずれにしても過去の経験を活かし、照ノ富士に全く相撲を取らせなかったという意味では最高の相撲だったと言える。
一方負けた照ノ富士は両膝の状態を含めて弱点を突かれたといった感じである。負けたとはいえ、体はそれなりに動いており、後に引きずるような黒星ではない。相撲はこういうこともあるので気持ちの切り替えが大事である。
そして1敗の朝乃山も竜電に勝ったので9日目終了時点で1敗が照ノ富士、明生、朝乃山の3人となった。そして2敗で霧馬山、若元春など4人が追いかける展開となった。確かに1敗で3人が並んだので優勝争いが面白くなってきたと言えるかもしれない。しかし誰が照ノ富士に勝てるのかと考えた時、四つ相撲に関しては誰も思い当たらない。大関獲りの霧馬山や若元春も勝つまでは難しいと私は思った。また四つ相撲と言う枠を外しても一気に押し込んだ時の大栄翔くらいしか思い浮かばない。並んだとはいえ、横綱が有利なのは変わらないと見ていた。
続く
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