2023年3月場所個別評価 北青鵬

 今場所は新入幕で東前頭15枚目だったが9勝6敗で勝ち越した。4連勝スタートも5日目からは3連敗し、前半戦は5勝3敗で折り返した。そして後半戦は連勝、連敗があったが14日目に勝ち越しを決めた。千秋楽は一山本を二分以上の長い相撲の末に寄り切りで破り、9勝で場所を終えた。

 内容に関しては身長2メートル4センチの長身と長いリーチを活かした右四つの相撲で白星を挙げていた。特に良かったのが8日目の琴恵光戦である。立ち合いから相手に押された上に懐に入られ、土俵際に追い詰められた。しかし差された右を左から抱え込むと今度は右手を、琴恵光から見て頭の右側から回し、縦ミツよりも右側の横ミツを掴んだ。これを軸に体を入れ替えつつ、左手でも横ミツを掴み、そのまま琴恵光を持ち上げて投げ捨てた。日本人にはできない芸当である。日本への在留期間が10年を超えているため外国出身枠の対象とはなっておらず、北海道札幌市出身となっている。話を相撲に戻すと体格だけでなく、相撲の流れではありえないような動きをする内容が一場所に何回かあり、それを見るたびに驚かされる。私的には元大関貴ノ浪の動きに少し似ていると思っている。本人も四つ相撲にはかなりの自信を持っているようである。

 一方課題としては立ち合いと腰高が挙げられる。9日目の千代翔馬戦は立ち合いで突き起こされた後左上手を取られ、すぐに投げを打たれて転がされた。北青鵬対策としては分かりやすい一番だったと言える。また12日目の宝富士戦のように廻しを取っても体を寄せられ、重心が上がるとあっさりと土俵を割る相撲も時々見られる。背が高いので腰高になるのは仕方がないが、やはり前に出て勝つ相撲をもっと増やしていきたい。勿論本場所だけでなく、稽古場から意識したいところである。

 5月場所は東前頭12枚目となったが、今度こそは二桁勝利を期待したい。それだけの能力と素質は持っている。また休場を除けば負け越しはなく、年齢も21歳と若い。課題はあるが体格といい相撲内容といい規格外なので今後が非常に楽しみである。