2023年3月場所個別評価 貴景勝
今場所は綱取りの場所だったが3勝4敗8休という成績に終わった。初日は翔猿に叩き込みで敗れて黒星スタート。その後は連勝するも3日目の正代戦後は左脚を気にする素振りを見せた。そして4日目は左膝にテーピングを施して土俵に上がるも阿炎に叩き込みで敗れて2敗目。6日目は御嶽海に押し出しで敗れて3敗となり、この時点で綱取りがかなり厳しくなった。翌7日目からは左膝内側半月板損傷のため休場となり、綱取りから一転、来場所はカド番となった。
結果論になるが、やはり初日に翔猿に敗れた一番が痛かった。2場所連続で負けており、先場所は少し長い相撲になったということで早く勝負を付けたかったのだと思う。ぶちかましてから一気に前に出たが翔猿に見透かされ、土俵際で右に回り込まれて突き落とされた。初日であり、苦手としている相手で作戦失敗と同時に気持ちに焦りが出た。相撲は15日間あるとはいえ、綱取りでの初日黒星は厳しい。貴景勝は突き押しだけの力士なのでなおさらである。また番付的に初日に当たる巡り合わせになったのも運がなかったと言えるのかもしれない。相撲だけを見ればそんなに焦らなくてもいいのにと思ってしまうが・・・。綱取りの力士としてみれば初日の内容が物足りなく見えたのは確かである。
そして左膝を痛めた後は明らかに本来の動きではなかった。5日目の竜電戦は相手は変化しないと決め込み、思いっきりぶちかましての白星だったがここまでが精一杯だった。翌日の御嶽海戦は二の矢の押しが繰り出せず、逆に押し出された。こうなってしまってはどうしようもない。
来場所は6度目のカド番となるが、カド番脱出に関しては問題ないと思う。師匠が言うように、そういったところには抜かりのない力士である。カド番脱出だけでなく、大関としての役割を期待したい。また綱取りに関しては一から出直しとなった訳だが、優勝すれば綱取りのチャンスが出てくる。また大関は現在貴景勝一人であり、番付的には横綱に一番近い力士である。今場所は地元での綱取りであり、周囲の期待に応えられず、悔しかったとは思うが今後の糧になるはずである。簡単に気持ちを切り替えるのは大変だと思うが、まずは膝の痛みを治した上で復帰に向けて稽古に取り組んで欲しい。過去の大関の中では力は上位であり、私は横綱を目指せる資格はあると思っている。ただ本人が諦めてしまっては仕方がないので今後もチャンスが巡ってくるものだと信じて頑張って欲しい。