2023年3月場所を振り返って 優勝争い その6

 そして決定戦だが二人を裁くのは立行司ではなく、三役格の行司である。関脇と小結の対戦なので決定戦は三役格の行司が務めるらしい。決まり事ではあるが、本割と決定戦で行司が違うというのは観ている方からすれば少しだけ違和感を感じた。横綱・大関の休場がこういったところにも影響を及ぼしているということだと思う。

 さて相撲の方だが、場所前は霧馬山が大栄翔が所属する追手風部屋に出稽古に行っており、追手風親方によると稽古はほぼ互角だったようだ。ということで普通に考えれば今度は大栄翔が勝つだろうと思っていた。そしてもう一つ気になっていたのが霧馬山が立ち合いで変化するのではないかということである。本割では大栄翔に押し込まれており、しかも霧馬山はモンゴル人である。過去には鶴竜や白鵬、照ノ富士などが終盤の重要な一番で立ち合いで変わっており、物議を醸している。日本人ではまずあり得ないことだが、モンゴル人なのでそれが頭をよぎった。しかし決定戦も霧馬山は真っすぐ当たったので個人的にはそれが少しホッとした。しかし霧馬山は本割の相撲を踏まえ、策を練っていたようである。本割と同じく押し込まれ、土俵際で右から突き落としを見せたが本割とは違って自ら後退し、大栄翔を誘い込んでいる。おそらく勝つにはこれしかないと思ったのだろう。物言いは付いたものの勝敗は明らかだった。霧馬山の作戦勝ちである。見事な初優勝であり、逆転優勝だった。

 負けた大栄翔は同じ負け方での連敗だったので悔しかったと思う。結果論を言えば霧馬山の動きを読めなかったということになるのだろうが、その動きをさせたというのは霧馬山が大栄翔の実力を認めているからに他ならない。また前に出ての負けなので負け方としても悪くはない。霧馬山同様、来場所も好成績を残せば大関昇進の可能性もあるのでこの悔しさをバネに、更に強くなって欲しい。

終わり