2023年1月場所個別評価 翠富士
今場所は西前頭3枚目だったが6勝9敗で負け越した。前半戦は4勝4敗で折り返したが、６日目は大関候補の豊昇龍を突き落としで破った。そして後半戦は9日目は阿炎を立ち合いの注文相撲で送り出しで破り、白星が先行した。しかし勢いもここまでだった。10日目からは役力士との対戦が続くと黒星が増え、終盤は3連敗で場所を終えた。
内容に関しては立ち合いから二本差し、相手の懐に入る相撲が多かった。しかし2場所続けて平幕上位で奮闘しており、相手もその実力が分かっている。肩透かしに行ったところを押し出されたり、差したところで相手に極められたりと苦戦していた。幕内最軽量の117キロであり、体力勝負に持ち込まれるとやはり苦しくなる。それでも懐に入れば肩透かしだけでなく、5日目の妙義龍戦では内無双で勝っているように技はたくさん持っており、対戦相手にとっては厄介な力士なのは間違いない。
触れない訳にはいかないのが6日目の豊昇龍戦と7日目の貴景勝戦である。豊昇龍戦は立ち合いから二本差すも豊昇龍に極められ、右腕を抱えられながら一気に寄られたが左からおっつけて残した。館内は大きな拍手である。その後は豊昇龍にじりじりと前に出られ、逆に懐に入られると再度一気に寄られた。翠富士は後ろに倒れながらも左突き落としで応戦。両者ともに土俵の外に転がり、物言いが付いた。体が落ちるのはほぼ同時であり、行司泣かせの一番である。長い協議となったが結局豊昇龍の体が早く落ちているとの説明で軍配通り翠富士の勝ちとなった。こういった熱戦はファンが一番望んでいるものである。翠富士はよく残したし、最後はよく粘ったと思う。貴景勝戦は激しい相撲となった。立ち合いから貴景勝が土俵際まで押し込んだが翠富士が右からいなして残した。そして翠富士が張り手を入れ、懐に入ろうとするも貴景勝はそれを嫌い、土俵中央に戻った。すると両者離れてしばらくにらみ合った後、翠富士が右を差して一気に前に出た。四つ相撲がほとんど取れない貴景勝は不利な体勢となった。しかし貴景勝が左から渾身の小手投げを打つと翠富士はたまらず土俵下に転がった。貴景勝も投げを打った後に両膝を付いており、両者が全力を出し切った一番だった。同学年であり、その意味でも火花が散る好勝負だった。
来場所は西前頭5枚目となった。思ったよりも番付が下がらず、上位力士との対戦も観れそうだ。それでも上位力士総当たりの地位ではないので二桁勝利を目標としたい。あとは体重は少しずつ増えてきているが、もう少し増量したい。平幕上位の番付が続き、頑張りすぎていた部分もあると思うので来場所は落ち着いて相撲を取って欲しいと思う次第である。