2023年1月場所個別評価 玉鷲

 今場所は9勝6敗で勝ち越した。3連勝スタートとなったが4日目からは3連敗。しかし6日目からは再び連勝し、11日目に勝ち越しを決めた。残り4日あり、星の上積みが期待されたが12日目からは連敗し、星を伸ばせなかった。千秋楽は平戸海を押し出しで破り、9勝で場所を終えた。

 内容に関しては突き押し相撲には威力があり、衰えは全く感じない。また負けた相撲に関しても相手に上手く懐に入られた相撲が多く、悲観するような内容ではない。今場所の星の並びは押し相撲力士らしく、連勝した後は連敗という流れだった。しかし一つ流れに乗れば大勝ちしていたかもしれないという内容であり、私は紙一重だったと見ている。当然だが3回目の優勝を狙えるだけの力は十分持っている。

 特に良かったのが初日の霧馬山戦と2日目の明生戦である。霧馬山戦は相手にすぐに二本差され、絶体絶命の体勢となった。しかし土俵際で左に回り込みながら最後は突き落とした。38歳とは思えない粘りのある相撲だった。明生戦は頭と頭がぶつかり合い、もの凄い音がしたが一気に押し出した。取組後に顔をしかめていたが、軽い脳震とうを起こしていたのだと思う。最近は少なくなったが、やはり頭と頭のぶつかり合いは大相撲の醍醐味である。

 さて来場所は三役に復帰できるかどうかは半々といったところだが、いずれにしても初日から役力士との対戦が続く番付となりそうだ。上位力士を倒すだけでなく、連勝して勢いに乗る可能性もあるので目が離せない。また体に張りがあるだけでなく、両肘にサポーターがないのも元気さを物語っている。他の力士とは違って二十代の頃は平幕下位~十両でくすぶっていただけに、まだまだ活躍が期待できそうだ。