2022年11月場所個別評価 熱海富士

 今場所は新入幕で西前頭15枚目という番付だったが4勝11敗という成績に終わった。連敗スタートも3日目からは3連勝し、白星が先行した。しかし6日目からは9連敗し、幕内の厳しさを味わった。千秋楽は隆の勝を上手投げで破り、連敗を止めて場所を終えた。

 場所前は師匠と横綱に立ち合いから左上手を取るようにと稽古で言われていたが実践できず、師匠から叱責されていたようだ。それがそのまま本場所に表れてしまったという感じである。得意の左上手を取れなかっただけでなく、右も差せなかった。また幕内力士の立ち合いの圧力やスピードにも対応できなかった。これでは勝てる訳がない。

 熱海富士は身長185センチ、体重168キロと体格に恵まれており、年齢も二十歳と若い。将来性のある若手力士だが、まだ体はできておらず、相撲の取り口を含めて発展途上といった印象である。また多くの力士が苦労する幕下上位は連続勝ち越しで一気に突破しており、十両も4場所で通過している。つまり入門してから壁にぶつかっていない。ほとんどの力士が壁にぶつかり、それを克服しながら強くなっていくので今がその時期なのかもしれない。その意味では今場所の結果は悲観することはないと私は思っている。

 1月場所は西十両3枚目となった。本人は二桁勝って幕内に戻りたいと語っているようだ。しかし私としては結果だけでなく、内容も求めたい。つまり立ち合いから左廻しを取る厳しい相撲を取って欲しい。仮に二桁勝ったとしても、内容が伴っていなければ同じことの繰り返しである。実践は大変かもしれないが、どういう相撲を取れば幕内でも相撲が取れるかというのを常に頭に入れておきたい。部屋には横綱だけでなく、錦富士や宝富士がいるので胸を借りて力を付けていきたいところだ。