2022年7月場所を振り返って 優勝争い その5

 星一つ差で2人を追走していた貴景勝は若隆景との取組だった。立ち合いで若隆景が右を差してきたところを左から抱えて振り回すという奇策に出た。そして振り回して土俵際まで持っていったもののすっぽ抜け、逆に右を差され、右の腰に付かれてそのまま寄り切られた。逸ノ城同様作戦失敗という結果だったが貴景勝は首を痛めており、ぶちかましができない中、考えた上での選択だったと思う。その意味で貴景勝の作戦を責めることは私にはできない。逆を言えば意表を突くような攻めをさせるくらい若隆景が力を付けてきているということでもある。いずれにしても4敗となり、逸ノ城以上に優勝はかなり厳しくなった。

 そして横綱である。ここで勝てば逸ノ城とは星一つの差が付き、貴景勝の優勝の可能性はなくなる。相手は正代。直近は6連勝中であり、正代には悪いが照ノ富士が勝つものだと思っていた。しかしスポーツ全般に言えるが、勝負事はフタを開けてみなければ分からない。相撲は立ち合いから横綱が一気に前に出るも右前廻しは取れず、逆に正代に右からいなされると引き落とされ、腹ばいになった。観た限りでは照ノ富士は焦って前に出る必要はなかったと思うが、それだけ膝の状態が良くないということである。一方正代は優勝争いには加われなかったものの、後半戦は立ち合いの当たりが見違えるように良くなり、持ち味である機動力が活かせるようになってきた。そして対照ノ富士戦は2年ぶりの白星であり、大関としての意地を見せた。

続く