2022年7月場所を振り返って 優勝争い その4

 13日目は逸ノ城は錦木戦だったが錦木は部屋の力士のコロナ感染が理由で休場となり、不戦勝となった。おそらく今場所の逸ノ城だったら勝てる相手だったとは思うが終盤であり、この不戦勝は大きかったと言える。照ノ富士は若隆景戦だったが立ち合いで相手が左上手を求めに来たが突き放して対応し、組まずにそのまま押し出した。12日目は苦手としている大栄翔戦だったが押し出して勝っており、終盤に向けて調子を上げてきたという印象である。そして貴景勝は正代との大関対決だったが立ち合いから主導権を握り、最後は押し出した。また13日目は幕内で不戦勝が7番もある異例の事態となったが照ノ富士も貴景勝も動揺は見せず、白星を重ねたあたりはさすが看板力士である。13日目終了時点で2敗は照ノ富士と逸ノ城、そして3敗は貴景勝という展開は変わらず、残り2日となった。

 14日目。久々に十両以上でコロナ感染に伴う休場者が出ず、関係者も胸をなでおろした中での土俵だったと思うが優勝争いは波乱が起こった。

 逸ノ城は明生戦だったが過去の対戦成績は6勝4敗で明生がリードしており、現在は番付を下げているものの、簡単に勝てる相手ではない。元関脇の実力者である。相撲は最後の仕切りで明生が仕切り線から少し後ろに下がって仕切った。何かあるかもしれないと私は思った。立ち合いで逸ノ城は左から張り、左上手を取りに行った。しかし左上手は取れたものの張り手は全く効いておらず、逆に右前廻しを取られた。そして懐に入られるとたまらず巻き替え、そこを明生に一気に寄り切られた。完敗であり、作戦失敗である。明生は身長180センチであり、幕内力士の中では背は低い方である。確かに背は高くないので肩越しでも上手を取り、相手の動きを止めるという選択だったのかもしれないが、明生は一気に前に出る相撲も取れる。理事長が指摘したように、安易に上手を取りに行き、楽に勝とうとしていると言われても仕方がない。最近の逸ノ城は以前とは違って厳しい相撲を取ることが増えてきたが、それでも時に相撲に対する甘さ、そして優しい性格が裏目に出ることがある。何より優勝争いのトップを走っている中での14日目の黒星であり、痛いなんてものではない。この時点では逸ノ城が優勝する可能性はかなり低くなったと私は見ていた。

続く