2022年5月場所個別評価 照ノ富士

 今場所は12勝3敗という成績で3場所ぶり7度目の優勝を果たした。黒星スタートとなり、6日目は玉鷲に敗れて2敗目。そして8日目は隆の勝に寄り切りで敗れて3敗となり、苦しい星勘定になった。しかし他の役力士も総崩れであり、また8日目終了時点で全勝と1敗がおらず、救われた部分はある。そして後半戦は調子を上げ、結果として全て白星を並べた。13日目に隆の勝が敗れ、優勝争いのトップに並んだが、横綱らしく自分の相撲を取ることに集中していた。後半戦は立て直したという点で改めて精神力の強さを改めて見せつけたといった印象である。

 内容に関しては負けた3番を除けば危なげなく相撲を取っていた。また極め出しで2番、極め倒しで1番勝っており、相手に懐に入られても抱え込んで相手の動きを止めるあたりは流石である。その一方で大栄翔や玉鷲など、のど輪押しが強い力士が相手だと脆さを見せる。また8日目の隆の勝戦は立ち合いから隆の勝にのど輪押しで体を起こされ、その後二本差されて一気に寄り切られた。確かに横綱は負けてはいけないが、この相撲に関しては隆の勝が上手く取ったと思う。照ノ富士は負ける相手が大体決まっており、大栄翔、玉鷲、阿武咲、明生がこれに当てはまる。相手にぶちかましを決められ、のど輪で体を起こされると苦しくなる。膝が完治することは考えられないのでこの傾向は今後も続くものと思われる。一方四つ相撲力士相手には絶対的な自信を持っていると言って過言ではない。右四つの相撲だけでなく、前廻しを取ったり抱え込んだり投げを打ったりと技の引き出しをたくさん持っている。また12日目の若隆景のように懐に入っても抱え込まれたらおしまいである。懐に入るのは構わないが、抱え込まれないのが条件である。しかし照ノ富士は懐に入られると同時に抱え込みを狙っており、これをかいくぐるのは至難の業と言っていいと思う。

 来場所は当然横綱としての役割を果たしてほしいが、優勝回数が7回となり、10回が視野に入ってきた。横綱は照ノ富士が73人目だが優勝回数10回以上は現時点で14人しかおらず、10回をクリアすれば強い横綱として認められる証となる。ちなみに同じ伊勢ヶ浜部屋所属だった元日馬富士は9回であり、10回に届いていない。本人も目標にしているようだが、簡単なように見えて難しい記録なので何とか達成してほしいところだ。今場所は若手で伸び盛りの琴ノ若や豊昇龍の挑戦を退けており、膝の問題はあるものの、照ノ富士の時代はもうしばらく続きそうだ。また今場所は大関は3人中2人が負け越しており、その意味でも照ノ富士にかかる期待は大きい。当然だが連覇を期待したい。