2022年3月場所を振り返って 優勝争い その5 三賞など

 そして優勝決定戦は攻防のある激しい相撲となった。立ち合いは高安はかち上げを選択。若隆景は右へいなしながらこらえると今度は高安が下手を取った。しかし若隆景は左へ回り込み、おっつけながら右下手を切り、再び押し合いの攻防となった。そして高安の圧力にこらえきれずに若隆景が珍しく呼び込むような引き技を見せた。これで私は高安が勝ったと思った。当然高安はここがチャンスとばかりに一気に押し込む。しかし若隆景は土俵際に詰まりながらも驚異的な粘りを見せる。腰が崩れ、右膝が大きく曲がりながらも高安の左手を手繰ると手繰った手ですぐに右上手を取り、体を開いての上手出し投げで高安を仕留めた。決定戦の相撲に関しては高安が、というよりも若隆景を褒めるしかない。最後の一連の動きもスロー映像で見ないとよく分からない。また短時間に若隆景はあらゆる技を繰り出している。そして上半身の動きだけではない。左足もそのままなら土俵を割る流れだったのを右足を交差させるような形で俵の内側に入れて残している。曲芸のような動きと言っても過言ではない。これで優勝という結果だけでなく、大関昇進に向けて起点を作った。5月場所で二桁勝利を挙げれば7月場所は大関獲りとなる。

 一方高安はあと一歩及ばなかった。結果的には14日目に負けたのが全てだったと思う。しかしインタビューでも淡々と受け答えをし、元稀勢の里の二所ノ関親方が独立した中でも稽古をして体を仕上げるなど精神的に成長したのは確かである。おそらくあと1回は優勝のチャンスが巡ってくると思うので今度こそはチャンスを掴みたい。

 三賞は技能賞は若隆景が5場所ぶり3度目の受賞となった。そして敢闘賞は高安と琴ノ若の二人が受賞した。高安は大関昇進前の2017年5月場所以来5年ぶりとなる5度目の受賞となった。琴ノ若は2場所連続3度目の受賞だが2場所連続というのが今の勢いを物語っている。

 十両は東13枚目の竜電が13勝2敗のハイレベルな成績で初優勝を果たした。出場停止処分明けだがやはり元三役とあってここでは力が違う。このままいけば幕内復帰はできそうである。ただ同じ出場停止処分を受けた阿炎や朝乃山とは内容が違う。おそらく周囲の人の信用を失っているものと思われる。今は何を語っても始まらないので師匠が言うように相撲に打ち込むしかない。5月場所は十両上位に番付を上げるが二桁勝利を挙げての再入幕といきたいところだ。

終わり