2022年3月場所を振り返って 優勝争い その4
最初に土俵に上がったのは琴ノ若である。相撲は立ち合いから右を差して左上手を取り、十分な体勢を作ったかに見えた。しかし豊昇龍は最後まで諦めない。下がりながら琴ノ若の左上手を切ると右からの下手出し投げで琴ノ若を転がした。琴ノ若の相撲が決して悪かった訳ではない。それよりも豊昇龍の上手さが光った一番だった。これで琴ノ若の優勝の可能性がなくなり、優勝争いは若隆景と高安の二人に絞られた。
次に土俵に上がったのは高安である。対戦相手の阿炎は7勝7敗であり、勝ち越しが懸かる。相撲は一方的だった。阿炎のモロ手突きが高安に命中し、高安が後退。そして阿炎に右からいなされると大きくバランスを崩し、そのままの流れで送り倒された。阿炎は会心の一番だった。一方負けた高安は阿炎の相撲内容が良かったとはいえ、優勝が懸かる力士が取る相撲ではない。負けるにしても負け方が悪すぎる。また阿炎とは二年ぶりの対戦であり、相撲の取り口の変化に驚いたというのもあったかもしれない。高安にとっては前日の黒星が尾を引きずったと見られても仕方がない。
そして結びで登場したのが若隆景である。高安が負けたので勝てば優勝が決まる。対戦相手は正代。対戦成績は正代が4勝3敗でリードしているものの先場所の白星は若隆景の勇み足によるものであり、内容的には若隆景が互角以上の戦いをしているという印象である。ただ今場所は若隆景が優勝を懸けており、正代としては大関として負けられない一番である。また正代は終盤に向けて調子を上げており、若隆景にとって簡単な相手ではないと思って観ていた。相撲は若隆景が右ハズ押しから右を差し、左上手を取り、十分な体勢を作ったかに見えた。しかし正代は右下手を取ると右腰をぶつけるような形で一気に寄ると若隆景はたまらず土俵を割った。若隆景は決して悪い相撲ではなかった。しかし正代とは体格差がある。大関とまともに組んだことが敗因である。組むにしても相手の腰に付くような形で組みたかった。まともに組めば正代は技の引き出しをたくさん持っており、地力の差が出た一番となった。これで若隆景も3敗となり、高安との優勝決定戦となった。
続く
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