2025年7月場所個別評価 玉鷲

 今場所は西前頭4枚目だったが11勝4敗の好成績で3回目の殊勲賞を受賞した。三賞受賞は2度目の優勝を果たした2022年9月場所以来となった。また40歳8か月での受賞は旭天鵬の40歳2か月を上回り、最年長記録を樹立した。

 今場所の記録に関してまとめると4日目で幕内連続出場を1066回とし、黒姫山を抜いて史上3位となった。10日目は大の里を突き落としで破り、1940年1月場所の大潮の39歳5か月による金星を85年ぶりに更新し、最年長金星を獲得した。そして千秋楽で通算白星を872勝とし、大鵬と並んで歴代9位タイとなった。

 4連勝スタートも初日から2日続けて差し違えでの白星であり、運も味方した。しかし運を生かして白星を伸ばすあたりが玉鷲の凄さである。前半戦はトップタイの7勝1敗で折り返した。そして後半戦は9日目は阿武剋に敗れて2敗目となったが10日目は大の里との2敗対決を制すると同時に歴史的な金星を挙げた。11日目からは連敗し、優勝争いからは脱落したものの終盤は白星を伸ばし、11勝で場所を終えた。

 内容に関しては突き押し相撲で白星を挙げていたが、今場所は土俵際での粘りも光った。初日の平戸海戦は押し込まれたものの左からの突き落としで白星を手に入れた。そして2日目の明生戦は泳がされて背中を見せ、負けたと思ったが土俵際でクルっと右に回り、俵を割りながら左に払うようにして突き落とした。ベテランともなればあっさりと土俵を割ってもおかしくないところだが、粘れるあたりが40歳の動きではない。

 そして粘りという点では金星となった大の里戦も同様である。立ち合いでやや左に動き、大の里の右差しを封じると左を差した。しかし大の里も左を差すと構わず前に出てきた。すると土俵際での右からの突き落としが鮮やかに決まった。左を差し、大の里の上体を浮かせたことが勝因である。またベテランとはいえ、それなりに稽古を重ねているのだろう。確かに大の里の調子が良くなかったかもしれないが、伸びしろ十分の新横綱に勝ったのはお見事の一言に尽きる。

 平幕上位での11勝ということで来場所は3年ぶりの三役復帰の可能性が出てきた。また実現すれば昭和以降の最年長記録となる。番付に関しては安青錦が関脇に上がれれば小結、小結止まりなら前頭筆頭ということになりそうである。このあたりは審判部の判断ひとつであり、何とも言えない。ただ上位力士相手に通用するところを示したのは事実である。今の体の動きなら展開次第ではあるものの、優勝しても全く驚けない。体も張っており、当分は活躍が見込めそうだ。