大鵬の遺伝子を持つ男 王鵬 その3
そして感心するのが張り手は一切見せないという点である。普通突き押しが得意な力士は間隔が開くと張り手を入れたりすることがよくあるが、王鵬は決まって押すことに徹している。まさに正々堂々とした相撲の取り口であり、相撲にポリシーを感じる。その部分では張り手を得意としていた父・貴闘力の面影は全くない。
また努力する才能を持ち、修正能力があるのも特長である。幕下下位で停滞しかけた時はのど輪押しで相手の上体を起こし、一気に後退させる相撲で番付を上げた。その後新十両となったが今度はのど輪押しの手を手繰られることが多くなり、壁にぶつかった。しかし場所後の合同稽古で差す相撲に手ごたえを感じ、押しながら差す相撲も取るようになった。王鵬は体が大きい上に骨格が大きいので差しても相手の上体が浮いてしまう。また差す相撲が主体ではないものの、以前より安定感が増してきた。手足が長いので四つ相撲には持ってこいの体である。ただそれでも廻しを取って力を発揮するタイプではない。相手を押し込んで、詰めのところで廻しを取るのがベターというタイプである。このように器用ではないが、相撲の取り口を修正できる能力は今後に活きてきそうである。また努力する才能は大鵬も認めており、相撲を観た限りでは稽古量は十分である。
課題としては脇の甘さ、腰の高さが挙げられる。しかし脇の甘さに関しては二本差され、一気に前に出られるような相撲は少なくなっており、良くなってきている。問題はやはり腰の高さである。背が高い上に足が長いので今後も常に意識して腰を低くする必要がある。ある意味では照ノ富士のように前傾姿勢を保つ相撲が求められる。ただ本人もそれは分かっており、常に意識しているのは相撲を観ていてもよく分かる。あとは稽古と実戦で少しずつ番付を上げていきたい。
続く
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