2021年9月場所個別評価 妙義龍

 今場所は11勝4敗の好成績で8年ぶり6度目の技能賞を受賞した。初日から白星を並べ、前半戦は7勝1敗で折り返した。そして後半戦も白星を増やし、終盤は上位力士との対戦となった。13日目の貴景勝戦は押し込まれるも土俵際の掬い投げで逆転勝利した。貴景勝戦は過去13連敗しており、嬉しい対貴景勝戦初勝利となった。埼玉栄高校の先輩でもあり、ホッとした部分もあったかもしれない。そして14日目の正代戦は立ち合いから左前廻しを取っての速攻相撲で一気に寄り切った。この時点で照ノ富士と星一つ差であり、優勝の可能性もあった。千秋楽の対戦相手が注目されたが照ノ富士ではなく、明生だった。注目されたが立ち合いで当たってからの右からの肩透かしに両手を付いてしまった。これで4敗となり、照ノ富士の優勝が決まった。それでも14日目に敗れていれば千秋楽を待たずして照ノ富士の優勝が決まるところだった。千秋楽まで優勝争いを延ばし、終盤に2大関を倒したという意味でも今場所を盛り上げた立役者である。

 内容に関しては押してから差す相撲だけでなく、立ち合いからすぐに前廻しを取りにいく相撲も見られた。前廻し狙いは今までは見られなかった攻めである。年齢も35歳とベテランの域に入ってきており、押すだけでは厳しいということで相撲の幅を広げてきたのだと思う。それが上手くいったという印象である。勿論14日目の正代戦は会心の一番だったと思うが、10日目の隠岐の海戦も好内容だった。立ち合いで左を差すも右は押す形であり、相手の差し手を許さなかった。その後右前廻しを取ると一気に寄り切った。技能賞受賞が納得と思わせた一番だった。

 11月場所は西前頭3枚目という番付となったが勝ち越しての三役復帰を狙いたい。本人もそれを意識しているようである。また一気に前に出るスピードは衰えておらず、今場所に続いての活躍を期待したい。