2025年3月場所個別評価 大の里

 今場所は12勝3敗という成績で3場所ぶり3度目の優勝を果たした。また大関昇進後は初めての優勝となった。前半戦は4日目は若元春に不覚を取ったが、7勝1敗で折り返した。そして後半戦は10日目は高安との1敗対決に敗れて2敗となり、優勝争いから後退した。その後高安が敗れて再びトップに並んだものの、13日目は王鵬に敗れて3敗目となり、優勝に向けては致命的な黒星に見えた。しかし14日目は高安がまたしても敗れ、優勝の可能性が出て来た。終盤は白星を並べて高安との優勝決定戦に持ち込み、決定戦を制すると同時に大関としての役割を果たした。

 先場所は黒星スタートとなり、序盤で3敗したことが最後まで尾を引いた。ということで今場所はいつも以上に初日の入りを意識して調整したようだ。結果として前半戦を1敗で乗り切り、それが優勝の要因と言える。

 ただ15日間は長く、初日を意識すると後半が厳しくなる。悪い癖の腰高とまともな叩きが出て、3敗目を喫した。しかし勝負処で高安が負けたことに救われた。終盤は気持ちが吹っ切れ、相手の事よりも自分の相撲を取ることに集中していた。あとは本人が言うように気持ちである。決定戦では高安に左を差されながらも右上手を取り、出足と馬力に任せて圧倒した。細かいことを考えなかったのが勝因と言える。

 また私としては14日目の取組後に語った「(優勝は)ないものと思って」という言葉を忘れて欲しくない。あくまで高安が負け、その結果転がり込んできた優勝でもある。内容も15日間安定しているとは言えず、優勝力士の内容ではない。今場所の内容に関しては高安の方が上である。負けた相撲を中心に反省するところは反省して次の場所に備えて欲しい。

 来場所は綱取り場所となるが、優勝すれば上がれそうである。それでも12勝では物足りず、13勝以上の星を求めたい。ただ来場所後かは分からないが、近いうちに横綱に上がれそうである。稽古量や守りに入った後の対応などやるべきことがまだまだたくさんある。裏を返せば伸びしろでもある。一方土俵際の詰めは進化しており、成長の跡が見られる。あとは課題さえ克服できれば自ずと上が見えてくる。今場所のように土壇場で気持ちを切り替えられるのは今後も武器となりそうだ。横綱になれる要素をたくさん持っており、更なる成長を期待したい。