2021年7月場所個別評価 宇良

 今場所は西前頭13枚目で21場所ぶりの幕内復帰となったが10勝5敗で自身2度目の幕内2桁勝利となった。前半戦は4勝4敗で折り返した。そして後半戦は連勝し、12日目に勝ち越しを決めた。その後も白星を重ね、14日目は新小結の明生を寄り切りで破ると千秋楽は千代翔馬のアッパー気味の張り手2発を耐え、押し出した。

 内容に関しては今場所は右を差す相撲が多かった。やはり体重が143キロまで増え、押されにくくなったのが要因として挙げられる。今までは相手の出方を見ながらの押し相撲と足取りというイメージだったが、そのイメージが大きく変わった。今後は対戦相手によって押し相撲と四つ相撲を使い分けていくことになりそうだ。また増量したことで土俵下に転落した時も受け身が取れるようになった。これで怪我のリスクは減るので観ている方は安心である。

 取組に関しては印象に残る相撲が多すぎてピックアップに困るくらいである。10日目の千代の国戦は押し合いからきっちりと押し出した。9日目の宝富士戦と12日目の栃ノ心戦は四つに組むと自ら仕掛けた。これも増量の成果である。宝富士戦はとったりで転がし、栃ノ心戦は肩透かしを連発し、最後は突き落とした。14日目の明生戦は押し込まれるも残し、体を入れ替え、左四つに組むと力強く寄り切った。一方で惜しかったのが13日目の魁聖戦である。得意の居反りで魁聖に横を向かせ、上手投げで勝ったかに見えたが投げを打った際に左手が魁聖のマゲを掴んだとして反則負けとなった。居反りが出ただけに何とも残念な黒星だった。

 さて9月場所は東前頭6枚目となったが再度の勝ち越しといきたい。今場所のような相撲が取れれば十分可能である。また今場所は敢闘賞候補に挙がりながら票が届かず、受賞を逃したが、親方衆に正攻法の相撲のイメージを植え付けることはできたと思う。三賞は縁がないものと諦めるのではなく、今場所のような相撲が取れれば三賞のチャンスは何度もある。そして今場所不思議に思ったのが平幕下位という番付に関わらず、小結明生との対戦があったり、平幕中位の宝富士、霧馬山、千代翔馬と対戦したことである。おそらく審判部に能力は評価されているということだと思う。また今挙げた力士には全て勝っており、番付が上がっても苦戦するとは思えない。いずれにしても結果だけでなく、館内を盛り上げるような相撲にも期待したいところだ。