2021年3月場所個別評価 朝乃山

 今場所は10勝5敗という成績だった。2日目は高安に寄り倒しで敗れて初黒星。そして7日目からは連敗し、前半戦は5勝3敗で折り返した。後半戦は3敗を守っていたが13日目からは連敗し、優勝争いから脱落した。千秋楽は正代に勝ち、10勝で場所を終えた。大関昇進後は優勝こそないものの5場所中4場所で2桁勝利を挙げており、やはり地力がある。そして横綱候補の1人であることは間違いない。

 内容に関しては勝った相撲に関しては得意の右四つに組み止めていた。そして相撲に安定感があり、コンスタントに2桁勝利を挙げられる相撲内容である。負けた相撲に関しては高安戦は右を差したものの左上手をがっちり引かれ、動きを止められたのが敗因である。8日目の大栄翔戦は電車道で持っていかれてしまった。13日目の貴景勝戦は紙一重の一番だったが突き落としを見せたところで自らバランスを崩した。14日目の照ノ富士戦は右を差し、体を起こしたものの照ノ富士に右を差され、かいなを返されたのが敗因である。これで対照ノ富士戦は5連敗となった。そして個人的に納得がいかないのが7日目の霧馬山戦である。立ち合いで相手に変わり気味に左上手を取られると横に付かれ、成す術なく送り出された。霧馬山は時に左上手を求めに行く立ち合いをすることがある。その動きをなぜ読めなかったのか?動きを見た限りでは頭に入っているようには全く見えなかった。確かに自分の相撲を取ることは大事である。しかしそれと同時に相手の相撲を研究することも大事である。大関という立場を考えればなおさらである。あまりに不用意だったと言わざるを得ない。結局悪い流れになり、翌日の大栄翔戦も一方的な相撲で敗れ、連敗となった。最近は休場が続いているが、白鵬のような一番一番に対する集中力が求められる。

 来場所に関しては優勝争いに絡み、優勝を目指したい。同じく右四つを得意としている照ノ富士戦は連敗しており、技量に差があるのは明白である。しかし技量は一朝一夕で高まるものではないので工夫しながら少しずつ高めていくしかない。横綱昇進に向けてという意味では課題が山積しており、早期の横綱昇進はないと見ている。また3月場所後に「あの人を倒さないと上には行けない」と語っていたようだが、それは紛れもない事実である。しかし逆を言えば技量を高める絶好のチャンスである。立場的にも自ら横綱を目指すだけでなく、照ノ富士の横綱昇進を簡単に許してはいけない。照ノ富士の大関復帰をきっかけに相撲に対する意識の向上を期待したい。