2023年7月場所個別評価 朝乃山

 今場所は8勝3敗3休という成績だった。黒星スタートとなり、5日目は北青鵬に敗れて2敗目。そして7日目の豊昇龍戦は元大関と大関獲りの若手力士との対戦ということで注目の一番となったが上手投げで敗れ、3敗となった。また豊昇龍に敗れた際左腕を痛め、8日目から休場した。しかし回復が思った以上に早く、12日目から再出場した。残り4日を全勝すれば勝ち越しという状況だったが全て白星を並べ、千秋楽に勝ち越しを決めた。

 内容に関しては6日目までは平幕力士との対戦だったが2敗し、元大関としては物足りなさが残った。初日の明生戦は右を差せず、前に出たところで腰が入り、そこを浴せ倒しで敗れた。5日目は体が一回り大きい北青鵬相手にがっぷり四つに組んでしまい、何もできないまま寄り切られた。対北青鵬戦はこれで先場所に続いて連敗となった。また勝ちはしたものの4日目の阿武咲戦も土俵際まで攻め込まれており、本来の相撲にはまだ戻っていない。そういう流れで迎えたのが豊昇龍戦である。攻め込むも相手に上手く対応され、一方的な相撲になってしまった。豊昇龍が上手く相撲を取ったのもあるが、怪我をするような相撲を取った朝乃山にも責任がある。そして場所後に豊昇龍は大関に昇進した。復帰を目指す元大関が伸びしろのある豊昇龍に先に大関に上がられた意味は重い。現実を受け止め、今まで以上に稽古をする必要がある。勿論再出場後は白星を並べ、勝ち越したのは立派だったと思う。しかし私としては再出場後の前に出る相撲を初日から取って欲しかった。元大関であり、意地の勝ち越しと言えるが二桁勝利は挙げておらず、大関復帰に向けて不安が残ったのは否めない。

 9月場所は西前頭2枚目となったが再度二桁勝利を目指すことになる。左腕はまだ回復していないが、8月25日の地元の富山県での巡業では若元春相手に相撲を取り稽古をしたようである。完調ではないものの、場所には間に合いそうである。また体の動きも大関にいた頃には戻っておらず、ブランクを埋めるにはあと数場所かかりそうである。私としては三役復帰や大関復帰を考えるよりも、目の前の一番一番に集中してほしいと思っている。若手力士が伸びてきており、大変な状況ではあるがまずは自分のことに集中してほしいというのが私の願いである。