2024年9月場所個別評価 若元春

 今場所は西前頭3枚目だったが11勝4敗の好成績だった。前半戦は7日目に大関琴櫻を破る活躍を見せ、5勝3敗で折り返した。そして後半戦は10日目からは連勝し、11勝まで星を伸ばした。

 内容に関しては5月場所で痛めた右足親指の状態が回復したこともあり、左四つの力強い相撲が戻ってきた。特に素晴らしかったのは初日の大栄翔戦と7日目の琴櫻戦である。大栄翔戦は相手の強烈なぶちかましと左のど輪で土俵際まで押し込まれた。しかし左をのぞかせると押し返し、大栄翔の引きに乗じて押し出した。途中までは明らかに大栄翔の相撲であり、そのまま押し出されてもおかしくなかった。しかし残して白星に結び付けたあたりは復調気配を感じさせた。そして琴櫻戦は右は相手の首を狙って突いたがすっぽ抜けたみたいだ。ひょっとしたら琴櫻は意外な立ち合いに驚いたのかもしれない。また琴櫻はいつものようにもろ差し狙いだったが、自身の左と琴櫻の右の差し手争いには差し勝ち、左下手を取ったことが大きかった。その後右上手を取り、十分な形を作った。琴櫻の方が体が大きいものの、若元春は上体の力が強く、両廻しを取れば万全である。その後は琴櫻の右上手を切った後に前に出た。そして土俵際で琴櫻に左掬い投げを打たれたものの我慢して寄り切った。若元春は左四つという絶対の型を持っており、誰が見ても分かるような相撲が取れるのが魅力である。

 さて私が若元春に対して少しだけ不満なのが三賞受賞の回数の少なさである。過去は技能賞と殊勲賞を1回ずつ受賞したのみである。今場所は弟の若隆景は大の里を破ったということで殊勲賞を受賞した。若隆景は過去4回はいずれも技能賞を受賞しているが、今回を含めて5回目である。またどちらも大関に近づいたという部分では同じである。若元春は今場所の若隆景のように絶好調の力士を倒すことが少ないのが原因かもしれない。三賞受賞が目的で相撲を取るのは筋違いかもしれないが、若元春には全勝力士を倒すなど、もっとインパクトのある活躍を求めたい。弟に比べたらそういったところの欲があるようには見えない。目立つような活躍ができれば三賞受賞の回数も増えてくるはずである。

 11月場所は3場所ぶりの三役復帰となるが、勝ち越して三役に定着したい。逆に阿炎と平戸海は平幕に陥落するということで今度は受けて立つ立場となる。三役定着に向けて真価が問われる場所となりそうだ。