2024年9月場所個別評価 大の里

 今場所は13勝2敗という成績で2場所ぶり2度目の優勝を果たした。また敢闘賞と技能賞を受賞し、いずれも3度目の受賞となった。そして自身が持つ新入幕からの連続三賞受賞を5場所に更新した。場所後の9月25日に11月場所の番付編成会議と臨時理事会が行われ、大関昇進を全会一致で承認し、正式に大関に昇進した。

 初日の熱海富士戦は物言いが付く際どい一番となったが軍配通り大の里の勝ちとなり、叩き込みでの白星となった。その後は勢いに乗り、相手を圧倒する内容で中日勝ち越しを決めると同時に優勝争いで単独トップに立った。そして後半戦は10日目は1敗の霧島に勝ち、優勝争いで星二つ差に広げた。その後12日目は若隆景に敗れ初黒星となったものの、13日目は琴櫻を取り直しの末に寄り切りで破った。また「三役で直近3場所33勝」を達成する12勝目となり、場所後の大関昇進が濃厚となった。翌14日目は豊昇龍を押し出し、千秋楽を待たずして優勝を決めた。

 内容に関しては立ち合いでコンスタントに強く当たれていたことが大きい。それに加えて今場所は左からの攻めが光った。特に良かったのが9日目の若元春戦である。廻しを取られたくないということでもろ手突きから突き放した。そして若元春に左前廻しを取られそうになったものの左ハズ押しで土俵際まで押し込むと最後は若元春に粘られながらもそのままの勢いで寄り倒した。左の攻めに関してはおっつけも見せており、攻めのバリエーションが一気に増えた印象である。

 そしてもう一番触れたいのが初日の熱海富士戦である。当たってすぐに熱海富士に左上手を取られたが右をねじ込み、左はおっつけの形で強引に前に出た。しかし土俵際で体を入れ替えられると頭を付けられて一気に前に出られ、防戦一方となった。それでも土俵際で左へ体を開いて叩き込み、際どい一番を制した。

 九分九厘熱海富士が勝ったと思ったが、土俵際で体を開けるスピードがあることに私は驚いた。普通ならそのまま寄り切られているところである。身長192センチ、体重182キロの巨体ながら鋭い反射神経を持っている。この反射神経があるならば、両廻しを取ったら逆に活かせなくなってしまう。勿論褒められた相撲ではないが、片方だけ廻しを取って動き回る相撲の方が大の里には合っている感じがする。また内容は別にして、場所を振り返っても初日に勝ったことは非常に大きかったと言えそうだ。

 11月場所は新大関となり、改めて注目されるが大関ということで今度は追われる立場となる。そして今の相撲のままでは横綱は厳しい。しかしである。まだ師匠から廻しを取る相撲は教わっておらず、その分伸びしろがある。そしてこれまでも課題が出たとしても次の場所で克服しており、大関に上がった後も課題をクリアすると予想している。よって横綱昇進まで2場所は厳しいにしても、3~4場所で通過するのではないかというのが私の見立てである。またこれまでの名力士とは違ったタイプの力士であり、今後も目が離せない。