2024年9月場所を振り返って 優勝争い 14日目 大の里-豊昇龍戦

 そして大の里の一番である。結びで豊昇龍戦となった。対豊昇龍戦は土俵の上では3戦3敗であり、そのいずれもが右からの下手投げで敗れている。大の里にとってはまさに「天敵」であり、結果だけでなく精神面も問われる一番となった。また豊昇龍はここまで7勝6敗と星が挙がっていないが、まだ勝ち越しを決めておらず、なりふり構わずの相撲を取ってくる可能性もある。大の里が強いとは分かっていても、それだけでは片付けられない部分もあった。

 相撲は大の里が迷わずもろ手突きを選択した。そしてもろ手突きがやや立ち腰で当たってきた豊昇龍に見事に命中した。右の突きで豊昇龍を一気に後退させると左を突き、最後は右のど輪でそのまま押し出した。文句のつけようのない内容で二度目の優勝を決めると同時に場所後の大関昇進を手繰り寄せた。

 もろ手突きだと手繰られるリスクもあり、バランスを崩してしまったらおしまいである。しかし覚悟を決め、強く当たることの方が大事と腹をくくったのだろう。本人は「立ち合いと土俵際、と自分に言い聞かせて、しっかり意識してやりました」と振り返っていた。気持ちだけではなく、ここまでの敗因を冷静の分析できていることが分かるコメントだった。

 また先場所は9勝6敗だったが、先場所敗れた6人のうち、豪ノ山を除く5人と顔が合っており、いずれも雪辱を果たしている。この部分は今場所調子が良かっただけでなく、修正力、そして分析力の高さを見せつけた。そして巨体に似合わず、あらゆる動きに対応できるのが大の里の凄さの一つである。

 場所後に大関昇進したが、廻しを取る相撲ではないので壁にぶつかることはあると思う。しかし廻しを取る相撲を覚えれば早いうちに横綱となりそうである。情報の限りではまだ廻しを取る相撲は師匠から教わっておらず、その部分での伸びしろも十分ある。よって大関昇進は通過点となる可能性が高い。そう遠くない日に横綱誕生となりそうだ。

終わり