2024年5月場所個別評価 佐田の海

 今場所は東前頭11枚目だったが9勝6敗で勝ち越した。連敗スタートも3日目からは3連勝し、前半戦は4勝4敗で折り返した。そして後半戦は白星を重ね、13日目は新入幕の時疾風を寄り切りで破り、勝ち越しを決めた。千秋楽は竜電に敗れ、二桁勝利は逃した。

 内容に関しては右四つの速攻相撲と投げ技で白星を挙げていた。4日目の玉鷲戦は右差しをおっつけられるもこらえてもろ差しとなり、一気に寄り倒した。37歳のベテランだが速攻相撲はまだまだ健在である。翌日の正代戦も当たってすぐにもろ差しとなり、正代の左巻き替えに乗じて前に出て寄り切った。実況の人が言っていたように若々しい相撲内容だった。しかし6日目の琴勝峰戦で上手投げで敗れた際に左足を痛め、立ち上がるのに時間がかかっていた。心配されたが7日目以降も土俵に上がり、奮闘していた。相撲に影響はなかったみたいだが、取組後は左足を、引きずっていた。それでも痛みを一切認めようとしないのが佐田の海らしい。師匠の教えだと思うし、同部屋だった現武隈親方の元大関豪栄道も一切愚痴はこぼさなかった。我慢するのが当たり前だという環境だと思われる。おそらくだが怪我をしながら逆に白星を伸ばしたのは凄いとしか言いようがない。

 また正代戦で通算700勝を達成した。現役3位の記録であり、1位は玉鷲の803勝である。そして幕内在位52場所であり、父の元小結佐田の海の45場所を抜いた。確かに三役には上がれていないものの、10年近く幕内を務めており、父も息子の活躍を認めているものと思われる。また十両に上がった頃を覚えているが、その時は父の名前を持ち出すのがおこがましいくらいの存在だった。しかし幕下転落後は辛抱し、十両に復帰するとすぐに幕内に昇進し、定着した。ファン目線で見ても努力しているのが伝わってくる力士である。父は速攻相撲を得意としていたが佐田の海には上手投げがあり、そのタイミングが絶妙な上に思い切りがいい。よって相手を呼び込むような投げは打たない。形は違えど相撲センスの良さは父譲りである。

 これで2場所連続勝ち越しであり、7月場所も勝ち越したい。当たって一気に持って行かれなければまだまだ通用しそうである。スピードは衰えておらず、勝負処が分かっており、勝負勘は若手力士が真似できないものを持っている。再度上位力士と当たる番付に戻すことを期待したい。