2022年11月場所を振り返って 優勝争い その7
さて取組後の高安は呼び出しや世話人に抱えられて何とか土俵を下りたものの立っているのが精一杯といった感じである。それでも土俵下に座り、次の取組の行方を見守った。この状況を見て貴景勝は何を思っただろうか?。もし自身が勝てば高安が再度土俵に上がることになる。また貴景勝も去年首を痛めており、高安の状況はおそらく分かっていたと思う。それが原因かは分からないが、仕切りの時から貴景勝は本割の時ほどは集中力は感じなかった。そして相撲も阿炎の立ち合いの変化を意識してか全く当たれず、引いたところを一気に押し出された。一方の阿炎は高安が首を痛めたことは忘れ、相撲に集中していた。文句なしの初優勝である。負けた貴景勝は今回に関してはこれで良かったのかもしれない。自身が負けたことで高安が再度土俵に上がる必要がなくなったのだから。また高安が首を痛め、しばらく動けなかったことで新たな問題が浮かび上がった。巴戦に限らず、取組中の脳震盪にどう対処するかである。結局高安に関しては対応らしい対応は見られなかった。また去年は当時三段目の響龍が取組中に土俵に頭を打ってそのまま動かなくなり、その後死亡するという事故が発生している。そして倒れてから5分以上医療措置が取られなかったことが判明しており、今後もこのようなことが起こることは十分考えられる。また脳震盪に関しては私の知る限りではラグビーやサッカーのヘディング、野球のデッドボールなどで議論されており、スポーツ界全体の問題と言っていいと思う。個人的には協会で話し合い、明文化してほしい。そうすれば今回でいえば高安を止めることができる。また高安を巴戦から外し、阿炎と貴景勝の勝者が優勝というシステムで良かったのではないか。巴戦は幕内に限らず、各段優勝でも十分考えられるのでその点を含めて協会には議論してもらいたい。ということで高安が優勝できなかっただけでなく、相撲協会の課題が突き付けられた格好となった。これを機に脳震盪対策が一歩でも前に進むことを望んでいる。
続く
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