2022年9月場所個別評価 金峰山

 今場所は新十両で西12枚目という番付だったが10勝5敗という成績だった。初日から連勝するなど好スタートを切り、前半戦は5勝3敗で折り返した。そして後半戦は12日目から連勝し、千秋楽は十両優勝を決めた栃武蔵を寄り切りで破り、白星を二桁に乗せた。

 さてここで金峰山の紹介をしたい。金峰山はカザフスタン出身で木瀬部屋所属であり、年齢は25歳である。身長191センチ、体重165キロと立派な体格をしており、突き・押しを得意としているが、右四つの相撲も取れる。18歳で来日した後日大に進学。3年次に全日本選手権個人で準優勝するなど実績を作り、2021年11月場所に三段目最下位格付出しでデビューした。そして三段目、幕下で優勝を果たすなど活躍し、今場所新十両となった。所要5場所でのスピード出世である。

 内容に関しては突き放す相撲が多かったが、時に廻しを求めに行く相撲もあった。また取り口だけでなく、立ち合いもぶちかましだけでなく、もろ手突きや差しに行ったり、または前廻しを狙いに行く相撲もあるなど引き出しが多い。突き押しが主体だが、対戦相手に応じて柔軟に相撲を取っていた感じである。

 印象に残ったのは8日目の大奄美戦、14日目の東白龍戦、千秋楽の栃武蔵戦である。大奄美戦は突き放しに行くも大奄美に左廻しを取られた。すると右を巻き替えて左上手を取り、そのままの流れでがぶりながら寄り切った。また横にずれながら寄ったのも良かった。土俵は丸いので大奄美のような腰の重たい力士が相手の時は正面からではなく、横へ寄っていくのが効果的である。東白龍戦はお互いにもろ手がぶつかり合ったが右のハズ押しで後退させると一気に押し出した。栃武蔵戦は立ち合いで左前廻しを狙いに行った。そしてすぐには取れなかったものの、栃武蔵に左上手を取られながらも右のかいなを返して相手のバランスを崩したところで左上手を取り、左から投げを打ちながら寄り切った。相撲を始めたのは来日した18歳の時からであり、まだ経験が浅い。しかしそれでも相手を圧倒するようなスケールの大きな相撲が取れる。幕下でも力の違いを見せつけていたが、十両でもそれは変わらなかった。まだまだ伸びていきそうな力士である。課題は突き押しの強化と廻しを取った時の攻めである。突き押しの威力はあるが、貴健斗戦では押し負けて引いてしまったようにまだまだ磨いていく必要がある。そして押し相撲をどれだけ極めるかが今後を左右しそうな気がする。また廻しを取りに行くのは構わないが、十両ともなると四つ相撲が得意な力士はそれなりの技量を持っている。金峰山は体格の割にはリーチは長くはないので廻しを取った時は速い攻めが求められる。長い相撲には持ち込みたくないところだ。

 来場所は西7枚目という番付となったが二桁勝利を挙げての新入幕の可能性も十分ありそうである。しかし番付は自ずと上がっていくと思うので今は部屋での稽古の方が大事だと私は考えている。部屋には宇良をはじめとして関取が揃っており、揉まれながら強くなっていって欲しい。