2025年11月場所個別評価 一山本

 今場所は東前頭8枚目だったが11勝4敗の好成績で2年ぶり2度目の敢闘賞を受賞した。7日目までは3勝4敗と黒星が先行していたが8日目からは8連勝し、白星を並べた。また終盤は番付上位の力士と対戦したが14日目は義ノ富士を土俵を飛び出しながら這わせた。千秋楽は勝てば三賞受賞という一番だったが若元春を送り倒しで破り、三賞を手中に収めた。

 内容に関しては叩き込みで2番、引き落としと突き落としで各一番勝っており、前に出る相撲で圧倒していたという訳ではない。それでも引いて勝った相撲も押し込んでいるからこそ引き技が決まる。そして手足の長さが生きる。特に義ノ富士戦は調子の良さが白星に結び付いたような相撲だった。

 また星取表を見ても8連勝の内の9日目から13日目の5日間はいずれも前頭二桁の力士との対戦だったので恵まれた感もある。今年は力を付けた1年であり、このくらいの番付の力士なら勝てるだけの地力は持っている。ということで個人的には終盤2日間を勝ったことがポイントだと思っている。

 素晴らしかったのは13日目の狼雅戦である。モロ手突きから押し込んだものの土俵際で左を手繰られ、回り込まれた。その際にバランスを崩して向き直ったものの狼雅に右を差された。一山本も右は差していたものの、四つ相撲なら狼雅に一日の長があり、不利な体勢のように見えた。しかし右からのいなしをこらえると左上手を取り、寄り切った。やはり前に出る圧力が付いてきているからこそいなしを我慢できたということだと思う。そして何とか白星に結び付けたいという気持ちが伝わってきた。粘り強く相撲を取った精神面も評価できる。

 さて来場所は東前頭筆頭となった。新三役はお預けとなったが勝ち越せば三役がほぼ確実である。今場所の勢いをそのままに、前半戦から上位力士を一人でも多く倒して流れに乗りたい。そして三役に上がれば、北海道出身では1993年1月場所の大翔鳳以来33年ぶりとなるので北海道のファンのためにも実現して欲しい。