阿炎は大関に上がれるのか? 略歴 その2

 私の当時の印象としては体は細かったものの手足が長い上にスピードもあり、将来が有望だと見ていた。しかしその一方で才能だけで相撲を取っている感じであり、稽古を積み重ねているようには見えなかった。十両昇進も努力の成果というよりも、持ち前の相撲センスを活かして要領よく十両に上がったように私は見えた。しかし才能だけで番付が上がるほど大相撲は甘くない。結局十両で壁にぶつかるとそのまま幕下に逆戻りという結果となった。

 阿炎にとっては角界に入って初めての挫折である。角界を辞めて就職活動をしようと思ったこともあったみたいだ。しかしそれに待ったをかけたのが師匠ではなく、元横綱鶴竜である。鶴竜の付け人として話だけでなく、横綱としての立ち居振る舞いを背中で教え、やんちゃだった若者を改心させた。

 そして気持ちを入れ替えると2017年3月場所で自身初の幕下優勝を果たすと翌5月場所は東幕下筆頭で5勝2敗と勝ち越し、翌7月場所に十両に復帰した。

 今度は十両に定着し、3場所で通過。2018年1月場所で新入幕を果たした。そして新入幕の場所で10勝5敗の成績で敢闘賞を受賞すると翌3月場所も10勝を挙げ、5月場所は東前頭2枚目となり、初めての幕内上位の番付となったが7勝8敗で負け越した。それでも6日目は横綱白鵬を破り、自身初の金星を獲得した。そして次の7月場所も6勝9敗と負け越したが5日目に鶴竜を破り、2場所連続となる金星を挙げた。その後も2場所連続で負け越したが2019年1月場所からは再び連続で勝ち越し、同年7月場所は新三役となり、東小結という番付となった。小結では3場所連続で勝ち越すも番付運に恵まれず、関脇昇進とはいかなかった。そして翌2020年1月場所前の出稽古で右足を痛めた。その影響もあり、1月場所は5勝10敗と負け越し、平幕に陥落となった。

続く