2022年1月場所個別評価 阿炎

 今場所は12勝3敗の好成績で初となる敢闘賞を受賞した。6連勝スタートを切ったが7日目からは連敗し、前半戦は6勝2敗で折り返した。そして後半戦は9日目に連敗を止めると再び連勝した。また12日目は優勝争いのトップを走っていた照ノ富士と御嶽海がともに敗れたため優勝争いのトップに並んだ。しかし13日目は御嶽海との2敗同士の対決となったが押し出しで敗れ、3敗に後退。それでも14日目は照ノ富士を押し出しで破り、4年ぶりの金星を挙げ、優勝の可能性を残した。そして千秋楽は琴ノ若との3敗同士の対決を制し、優勝決定巴戦進出の可能性もあったが2敗の御嶽海が照ノ富士に勝ったため、優勝決定巴戦とはならなかった。

 内容に関しては先場所同様、もろ手突きの相撲で相手を圧倒していた。特に後半戦は手繰られるなど抵抗されたが阿炎はもろ手突きだけでなく、回り込むスピードが速い。また手足が長いので廻しを取っても相撲が取れる。そして稽古量が十分なので長い相撲も取れるようになった。千秋楽の琴ノ若戦は突きといなしの応酬となったが最後は引き落として熱戦を制した。

 やはり最大のハイライトは14日目の照ノ富士戦である。もろ手突きから右へいなして照ノ富士のバランスを崩すと左ののど輪で押し込み、再び右へいなした。すると照ノ富士が大きくバランスを崩し、そのまま押し出した。また勝った際に腰を下ろす姿勢を見せており、基本を大切に稽古をしているのがよく分かった。確かに照ノ富士の膝の状態が良くなかったのかもしれないが、それを差し引いても横綱に勝った価値はある。先場所の悔しさを晴らしたという意味でも素晴らしい一番だった。

 負けた相撲に関しては7日目の阿武咲戦は手がよく伸びていた一方、足が出ていなかったので突き落とされた。阿武咲の立ち合いの圧力が強かったというのもあるかもしれない。8日目の豊昇龍戦は相手の注文相撲にハマったといった内容だった。相撲は時にこういうこともある。後に引きずるような内容ではなかった。しかし13日目の御嶽海戦だけは完敗だった。もろ手突きを下からあてがわれただけでなく、前に出て圧力を掛けられた。そしてたまらず引いたところを体を寄せて押し出された。結果的にはこの一番が優勝争いを大きく左右した。また厳しく言えば、優勝するためには今の圧力ではまだ足りないということである。上を目指すには更なる圧力の強化が求められる。

 さて来場所は三役に復帰し、新関脇昇進ということになりそうである。また御嶽海が大関に昇進したので次の大関候補と言っていいと思う。まずは2桁勝利を挙げ、大関昇進への起点を作りたい。そして来場所は二大関がカド番である。照ノ富士を除けば上位陣は安定感を欠いており、その意味では関脇という地位以上の役割が求められる。ただ星勘定は気にせず、一日一番、自分の相撲を取ることだけに集中してほしい。自ずと結果は付いてくると思うし、それだけの相撲を取っている。引き続き稽古に意欲的に取り組めば上だけでなく、更にその上を目指せるかもしれない。少し遠回りをしたが才能が開花したようであり、私としても嬉しい限りである。