2025年7月場所個別評価 藤ノ川
今場所は西前頭14枚目であり、新入幕と同時に若碇から改名したが10勝5敗の好成績で敢闘賞を受賞した。連敗スタートとなったが3日目は英乃海を押し出し、幕内初白星を挙げた。その後は連勝し、前半戦は5勝3敗で折り返した。そして後半戦は13日目は尊富士の休場による不戦勝で勝ち越しを決めた。千秋楽は勝てば敢闘賞受賞という一番だったが一山本を叩き込み、父が果たせなかった三賞を手に入れた。
それでは藤ノ川を紹介したい。藤ノ川は京都府京都市西京区出身で伊勢ノ海部屋所属であり、年齢は20歳である。また身長176センチ、体重117キロであり、押し、左四つ、寄り、投げを得意としている。父は伊勢ノ海部屋の部屋付きの甲山親方であり、元幕内大碇である。そして弟は同じく伊勢ノ海部屋で幕下の碇潟である。本人は生まれも育ちも東京だが、2024年3月場所から父と同じ出身地に変更している。
内容に関しては小兵ながら頭からぶちかます激しい相撲で奮闘していた。その代償で序盤から首を痛め、取組後は肩付近まで氷のうで冷やしていたようである。3日目の英乃海戦は立ち合いの当たりで首が入り、途中から頭が真っ白になった中での初白星だった。そして4日目の琴勝峰戦である。取り直し後の一番で琴勝峰から強烈な右かち上げを食らった。それでもめげず、琴勝峰の突っ張りを下からあてがって応戦すると左に叩いて這わせた。かち上げが原因だと思うが左目の上を切り、出血しながら勝ち名乗りを受けた。翌日の翠富士戦は左目の上を3針縫っての土俵だった。恐かったとは思うが、頭からぶつかると二本差し、両下手を取った。その後豪快に吊り上げ、土俵の外に運んだ。気迫満点の相撲に館内からは大きな拍手が上がり、それと同時にどよめきが起こった。この激しさが持ち味の一つである。草野同様、新入幕として新風を巻き起こした。
来場所は番付を上げるが再度の勝ち越しを期待したい。また今後に向けてはやはり増量が望まれる。130キロくらいになれば相手の当たりをそれなりに受けられる内容に変わってくるはずである。それでも場所前の稽古では琴櫻に勝っており、力を付けてきているのは確かである。また身のこなしが非常に上手く、二代前の元関脇藤ノ川は「今牛若丸」と言われていたが、「令和の牛若丸」と言ってもいいかもしれない。負けん気が強く、いずれは上位力士を倒す存在になりそうである。新たな小兵力士の誕生であり、父が言う「お客さんが喜ぶ相撲を取ること」という願い通りの活躍が期待できそうである。何かやってくれそうな雰囲気を持っているだけに今後も目が離せない。
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