2025年7月場所個別評価 安青錦
今場所は東前頭筆頭だったが11勝4敗の好成績で初の技能賞を受賞した。また新入幕から3場所連続三賞受賞は大の里に続いて史上3人目となった。初日は琴櫻を内無双で倒し、対大関戦初勝利となった。そして3日目は豊昇龍を渡し込みで破り、初金星を挙げた。また初土俵から12場所での金星は、年6場所制では付け出しを除き小錦と友風の14場所を更新する最速記録となった。その後も白星を重ね、前半戦を6勝2敗で乗り切った。東筆頭ということで7日目までで役力士との対戦を終えており、後半戦も白星を重ねたので初優勝への期待も高まった。しかし14日目は草野に寄り切られて痛い3敗目となり、琴勝峰に単独トップを許した。そして千秋楽は琴勝峰に突き落とされ、初優勝は成らなかった。
内容に関しては低い姿勢からの頭を上げない相撲で白星を挙げていた。また内無双で琴櫻、霧島といずれも役力士に勝ったが、相撲の上手さだけでなく、腕力の強さも見せつけた。そして豊昇龍戦は懐に入ると豊昇龍の強引な右上手投げに対応し、スピード負けしなかった。低い姿勢で来ると見れば当然相手は上体を起こしにくる。その点で感心したのは9日目の若元春戦である。安青錦が見ながら当たり、突き起こしてから左下手を取った。しかし若元春は左四つのスペシャリストであり、左を差された上に右から抱えられ、左から上体を起こされかけた。しかし若元春が右上手を探りにきた瞬間、左からの下手ひねりで若元春はたまらず右膝から崩れ落ちた。相手の攻めを我慢することもできれば投げ技やひねりなどで勝負を付けることもできる。まさに技能賞にふさわしい相撲内容だった。
また場所後の夏巡業で場所中に左肩を痛めていたことを明かした。おそらく12日目の玉鷲戦で左下手投げで勝った際に痛めたものと思われる。終盤の連敗はプレッシャーもあったかもしれないが、肩の痛みも原因と言えそうだ。2日ともに本来の動きではなかった。それでもテーピングを施さず、相手に弱点を見せなかった姿勢は評価できる。また強い気持ちと信念を持っている力士である。
私的には大の里の出足は止められなかったものの豊昇龍のもろ手からの攻めは止めることができた。そして玉鷲には勝ったものの肩を痛めたというのが現時点での実力のように見える。しかし場所ごとに力を付けてきているのは明らかであり、まずは痛めた左肩を完治させてから稽古を再開し、力を付けていきたい。課題は立ち合いの当たりの強化と増量ということで明白である。
来場所は新三役が確実だが、東筆頭での11勝なので関脇の可能性もある。このあたりは審判部の判断ひとつである。そして実力的にも二桁勝てるかどうかが焦点となりそうだ。また12勝以上のハイレベルな成績を残せば11月場所での大関獲りの可能性もある。ただ三役に止まるレベルの力士ではなく、結果よりも地力強化の方が重要である。そして力が付けば優勝や地位などあらゆるものが後からついてくる。よって今はひたすら自分の相撲に磨きをかけて欲しい。
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