2025年7月場所個別評価 高安

 今場所は10勝5敗という成績だった。黒星スタートも2日目からは5連勝し、前半戦を6勝2敗で折り返した。そして後半戦は11日目は1敗で単独トップの一山本を上手投げで破り、三役では4年ぶりとなる勝ち越しを決めた。12日目は2敗の琴勝峰に敗れて4敗目となり、初優勝が厳しくなった。しかし千秋楽は新入幕の草野を突き出し、大関復帰の起点となる10勝目を挙げた。

 内容に関しては離れて良し、組んで良しの自在性のある相撲で白星を挙げていた。また優勝を争う平幕力士を退け、壁となって立ちはだかった。6日目の安青錦戦は突き立てたが安青錦に左を深く差されて下手を取られた。その後の安青錦の右内無双は右手を付きそうになったもののよくこらえた。そして安青錦の左を右から抱え込むと機を見て上手を肩越しに取り、取ると同時に右上手投げでねじ伏せた。安青錦は前日は霧島に内無双で勝っており、取組後は腕の力が相当強いと語っていた。はた目から見ても強烈であり、よく我慢したと思う。最後の上手を取ってからの投げは経験の成せる業である。11日目の一山本戦は突き放してから左を差そうとするも差せず、押し込まれたものの土俵際で右下手を取っての投げで裏返しにした。勝因は後退しながらも突き放して応戦し、一山本の頭からのぶちかましを許さなかったことである。これも若手が取れる相撲ではない。そして千秋楽の草野戦はかち上げから細かく突き立てて草野の上体を起こし、相手の引きに乗じてそのまま突き出した。草野は優勝の可能性が消えた直後の相撲であり、体に力が入っていなかったというのもあるかもしれない。それでも草野の右差しを許さず、相撲を取らせなかったことは評価できる。

 場所後は夏巡業に参加していたが、腰痛を再発したので8月7日からの巡業を離脱した。持病であり、驚きはないが終盤の巡業に合流できるかどうかが9月場所に向けて焦点となりそうだ。

 来場所は関脇の可能性もあるが、おそらく小結据え置きが予想される。ただ大関復帰への起点を作ったのは事実であり、二桁勝てるかどうかがポイントである。年齢は35歳であり、最近は怪我も多いので大関復帰は現実的ではないかもしれない。しかし今場所の内容を見れば復帰できる力を持っているのは確かである。よって怪我をしなければ、調子が良ければという条件が付くものの、可能性は十分ありそうだ。また今場所のように両横綱が相次いで取りこぼすようであれば初優勝への期待が高まる。実力的には優勝争いをしても何らおかしくなく、悲願を達成できるかも見逃せないところだ。