2025年7月場所個別評価 豊昇龍

 今場所は1勝4敗10休という成績に終わった。初日は過去2勝10敗と分が悪い高安を外掛けで破り、好スタートを切ったかに見えた。しかし2日目は若元春に敗れ、早くも初黒星を喫した。そしてこの日から3連敗となり、左足親指を痛めたため、5日目から休場となった。横綱3場所目で休場は2回目であり、早くも苦境に立たされた。

 場所前から左足親指を痛めていたようだが、初日の内容を見た限りではその影響は感じなかった。横綱ということで序盤の連敗は許されないのだが、横綱として見ればやはり2日目と3日目の黒星は物足りなさを覚えた。2日目の若元春戦は若元春に張り差しを読まれ、左から張ったものの左に動いてかわされた。その後若元春得意の左四つに組み止められ、動きを止められた。若元春は右上手は取れなかったものの左下手はしっかりと引いていた。一方豊昇龍は廻しを取れず、苦しい形になった。そして豊昇龍が苦し紛れに右を巻き替えた瞬間を若元春は見逃さず、一気に寄り切られた。いくら足腰の良い豊昇龍といえど、巻き替えた瞬間にアゴの下に頭を入れられては逆転できる訳がない。また張り差しを多用しているが、何度も墓穴を掘っている印象がある。平幕力士に立ち合いで見切りをつけられているようではこの先が思いやられるといった内容だった。

 3日目の安青錦戦は突き起こしにいったものの起こせず、安青錦に右下手を取られた。その後豊昇龍が強引な左上手投げを連発するも安青錦は低い姿勢を崩さず、右足を豊昇龍の両足の間に入れて体の密着を崩さない。最後は左からの渡し込みに背中から土俵に落ちた。勿論安青錦が素晴らしい相撲を取ったのは事実である。しかし豊昇龍の側に立てば、前日の若元春戦同様安青錦に上手投げを読まれており、簡単に対応されたように見えた。また安青錦は前日は大の里に敗れているが、もろ手からの右のど輪で上体が起き、一気に押し出されている。そして豊昇龍も同じくもろ手で押し込んだものの、簡単に懐に入られた。私には安青錦戦での相撲内容がそのまま横綱としての地力の差として表れているような気がする。体格的にも出足で大の里を上回るのは厳しいが、せめて安青錦の上体を起こせるくらいの出足は身に付けて欲しいところだ。

 場所後の夏巡業は休場していたが、8月7日の巡業から合流した。その日はぶつかりで草野に胸を出し、横綱土俵入りを披露した後取組にも入ったらしい。よって左足親指は大事には至っていないようだ。ただ出場すれば優勝を求められる立場である。左足親指を再度痛めるようなことがあれば休場する可能性もある。勿論巻き返しを期待したいが、それと同時に今後の動向に注目したい。