ラダーの申し子! 嘉陽 師匠の中村親方に関して 上位キラーとしての活躍

 その後2016年1月場所で新関脇に昇進した。大分県からの新関脇は玉乃海、千代大海以来戦後3人目となった。また新入幕から59場所掛かっての新関脇は兄弟子の豪風(68場所)に次ぐ史上2位のスロー記録であり、33歳9か月は戦後6位の高齢昇進となった。

 そして上位キラーとして活躍したが、やはり日馬富士、鶴竜に強かった印象がある。対日馬富士戦は9勝10敗だったが、一時は6勝2敗と大きくリードしていた。張り手を見せ、相手がカッとなって張り返したと同時に懐に入るなどして術中にはめていた。対鶴竜戦は7勝11敗だったが、鶴竜の横綱昇進後は6勝7敗(うち不戦勝1)だった。立ち合いで当たり負けせず、押し合いの攻防から鶴竜が引くのを見計らって懐に入り、一気に勝負を付けていた。おそらくだが鶴竜にとってはさぞかし嫌な相手だったに違いない。

 またそれと同時に覚えているのが当時の師匠の尾車親方(元大関琴風)が、横綱相手に勝った時に「お前、凄いよ」などと言い、しきりに褒めていたことである。兄弟子の豪風も含めて学生相撲出身であり、自身はそうではないものの、学生相撲出身者の育て方が上手かった。また嘉風も師匠となって弟子を育てているが、基本的には褒める指導であり、力士が伸び伸びと相撲を取り、その中で力を付けているように見える。

 その後2019年6月、故郷の大分県佐伯市での合宿中、同市のPR企画に参加した際に渓流で右膝を痛めて緊急手術を受けた。しかも再起不能の怪我であり、同年9月場所5日目の9月12日に日本相撲協会に引退届が提出され、年寄「中村」襲名が承認された。土俵外での怪我が原因ということで残念な形での現役引退となった。

続く