2021年11月場所個別評価 明生

 今場所は7勝8敗で負け越した。前半戦は4勝4敗で折り返したが平幕に4敗しており、後半戦は役力士との対戦を残していたので星勘定的には厳しくなった。そして後半戦は10日目は貴景勝を押し出しで破るも11日目からは連敗し、13日目に負け越しが決まった。しかし残り2日は連勝し、7勝で場所を終えた。

 内容的には引き技で負けた相撲が多かった印象があるが、私は内容が悪かったとは思わない。なぜなら先場所よりも前に出ようという姿勢が見えていたからである。先場所までは引き技で勝っていた相撲が多かったが、それで勝ち続けられるほど大相撲は甘くない。また本人もそれを分かっており、意識して相撲を取っているように見えた。そして負け越した後も気落ちせず、負け越しの幅を最小限に止めたあたりも明生らしい。体も良く動いており、稽古量も十分である。やはり貴景勝に初黒星を付けた10日目の相撲が光る。押し込まれても右へ回り込み、有利な体勢を作れるあたりはさすがである。相撲の上手さは今後も武器となりそうだ。

 さて明生の今年一年はまさに飛躍した一年となった。平幕で勝ち越しを続け、3月場所は初三賞となる敢闘賞を受賞した。そして7月場所で小結に昇進。勝ち越して9月場所は新関脇となり、8勝7敗で勝ち越した。今場所は負け越したものの、去年から8場所連続で勝ち越しており、見事としか言いようがない。また勢いだけでなく、実力が備わっていた証拠でもある。

 1月場所は小結となったが勝ち越しではなく、2桁勝利を期待したい。そして今明生に求められるのは目先の白星ではなく、前に出ようという姿勢である。まずは立ち合いの当たりをもっと強くし、相手を押し込めるようになった上で左四つに組むなり、そのまま押すといった相撲が取れれば理想である。逆に引きやいなしなど、上手さに走るようでは今後はかなり厳しくなる。明生は上手く立ち回れるタイプの力士なだけに、敢えてそれを封印し、前に出る相撲に集中するくらいの気持ちで丁度いい。三役を維持しようとする守りの姿勢ではなく、上を目指すにはどういう相撲を取ればいいかという攻めの姿勢で相撲を取って欲しい。