2021年9月場所個別評価 隠岐の海 

 今場所は10勝5敗の好成績だった。前半戦は6勝2敗で折り返した。そして後半戦も白星を重ね、11日目に勝ち越しを決めた。14日目は御嶽海を下手投げで破り、白星を2桁に乗せた。

 内容に関しては左四つに組み止める相撲で白星を挙げていた。印象に残ったのは小兵力士に対する相撲の取り口である。初日の照強戦は足取りにいかれ、土俵際では居反りを繰り出されたが、相手の動きを読み、冷静に寄り切った。7日目の宇良戦も同じく居反りを仕掛けられたものの腰を低くして押し倒した。9日目の翔猿戦は四つには組まず、左からおっつけてそのまま押し出した。最近の隠岐の海は小兵力士相手に限らず、相手の動きに冷静に対処し、落ち着いてさばく相撲が多くなっている。これは経験の成せる業であり、若手力士にできることではない。そして14日目の御嶽海戦は立ち合いから左を差し、得意の左四つに組み止めると左からの下手投げで御嶽海を転がした。36歳とベテランの域に入ってきているが、まだまだ健在である。よく稽古嫌いと言われているが、稽古嫌いで36歳まで相撲を取れるはずがない。自分なりに考えて稽古に取り組んできた結果が今に至っていると私は見ている。またベテランとはいっても元大関候補である。背が高く、手足が長い上に足腰も柔らかい。才能に恵まれているのは確かであり、今後は1日でも長く相撲を取ることに活かしてほしいところだ。

 11月場所は東前頭3枚目となったがまだ上位力士を倒せる力はありそうである。勿論三役復帰の可能性も十分ある。体はまだまだ動いており、経験値もある。そして困ったことではあるが、周囲が期待していないところで活躍するのが隠岐の海である。ということで期待はせず、成り行きを見守りたい。