これぞ理想の横綱! 照ノ富士 私が観た印象

 最初に目に入ってきたのは十両時代である。モンゴル出身力士としては珍しい巨漢力士であり、手足も長い。また体格だけでなくスケールの大きな相撲を見て、これは将来の・大関・横綱候補だと直感した。その後駆け上がるように大関に昇進したが、昇進後は壁にぶつかった。上体の力に頼った相撲が多く、この相撲では横綱には上がれないと見ていた。結局膝を痛めたことが原因で休場し、大関から陥落した。また陥落後は糖尿病にも悩まされ、序二段まで番付を下げることになった。糖尿病に関しては、若い頃は夜の街に繰り出しており、お酒をよく飲んでいたということでそのツケが回ってきたというところだと思う。ただこんなことを気安く言っては失礼なのだが、どん底を味わったからこそ横綱に上がれたと私は見ている。逆を言えば、奈落の底まで落ちなければ横綱には上がれなかったと思う。

 そして序二段転落を機に相撲の取り口が変わった。上体のパワーに頼った取り口から重心を低くし、前廻しを取る相撲が増えた。また前に出る相撲を取ることで膝への負担が減った。

 ただ私的に不安になったのが2020年9月場所である。この場所は勝ち越したものの左膝を痛め、13日目から休場した。東筆頭での勝ち越しであり、三役には復帰できるものの、先に向けては膝が持ちこたえられるのかという心配があった。しかしその後は好成績を並べ、一気に横綱に昇進した。当時横綱だった白鵬と鶴竜が毎場所のように休場しており、2人に代わって上位力士としての役割を果たしていた。よって横綱昇進は当然の結果である。その一方で膝は一杯一杯という状態にも見え、短命横綱に終わる可能性もあった。しかし長期休場はあったものの出場した時は結果を残し、3年半にわたって横綱の地位を守った。若手力士がなかなか伸びてこない中でよく頑張ったというのが率直な気持ちである。

続く