2021年9月場所個別評価 照ノ富士
新横綱の場所だったが13勝2敗という成績で5回目の優勝を飾った。全勝で前半戦を折り返した。しかし9日目は大栄翔に敗れて初黒星。そして12日目は明生に敗れて2敗となったが優勝争いではリードを保ち、千秋楽は自身の取組の前に妙義龍が敗れての優勝決定となった。一人横綱で大変だったとは思うが、横綱としての重責を果たした。
内容に関しては右四つに組み止める相撲に安定感があった。しかし中日勝ち越しを決めたものの、8日目の玉鷲戦は危なかった。相手の右のど輪と左おっつけに俵に詰まった。何とか右下手を取っていたので残せたという一番だった。また玉鷲戦は照ノ富士攻略のヒントを与えたような一番でもあった。簡単に言えば突き起こして照ノ富士の体を起こし、棒立ちにさせるという戦略である。そして玉鷲戦をヒントに上手くアレンジし、白星を手にしたのが大栄翔と明生というのが私の印象である。
また後半戦は負けた相撲だけでなく、勝った相撲も少し危ない場面があった。その原因の一つが横綱土俵入りと思われる。重さ10キロの綱に加え、化粧まわしを合わせると30キロくらいのものを抱えて四股を踏み、せり上がりをしなければならない。大関までのように土俵を一周し、両手を挙げればいいだけというのとは訳が違う。ましてや照ノ富士は両膝に爆弾を抱えている。おそらく後半戦は膝の疲れとの戦いだったのではないかと思う。前傾姿勢が保てず、棒立ちの体勢も時々見られた。しかし横綱としての責任感と気力で後半戦を乗り切ったという感じである。
さて来場所は白鵬が引退し、正真正銘の一人横綱となるが、2年ぶりの九州場所というのがポイントとなりそうだ。師匠の伊勢ヶ浜親方が語っていたが、地方場所なので普段とは違う病院に行かなければならない。また11月なので気温が下がってくるというのもある。
それでも今場所観た限りではやはり頭一つ抜けているのは確かである。高いレベルの優勝は少し厳しいかもしれないが、コンスタントに12~13勝くらい挙げられる相撲は取っている。また白鵬の引退で大関以上は3人だけであり、看板力士としての責任もより重たくなる。照ノ富士が役割を果たさなければ再び平幕優勝が増えることにもなりかねないので、横綱としての役割を果たすと同時に土俵を引き締めてほしい。
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