2025年3月場所個別評価 時疾風

 今場所は東前頭18枚目だったが10勝5敗の好成績だった。前半戦は4勝4敗で折り返した。そして後半戦は連勝し、12日目は湘南乃海を寄り切り、幕内4場所目で初の勝ち越しとなった。14日目は玉鷲との4敗対決を制し、10勝目を挙げるとともに優勝の可能性を残した。千秋楽は勝てば敢闘賞受賞という一番だったが霧島に敗れ、受賞はならなかった。

 内容に関しては左四つの相撲と投げ技で白星を挙げていた。3日目は東日本大震災のあった3月11日だったが十両の玉正鳳を押し出した。宮城県出身であり、被災地へ初めて幕内での白星を届けた。自身は中学2年の時に経験し、避難生活は免れたものの、1か月間は自宅に電気が通らず、ろうそくと井戸水での生活となった。よっていつも以上に気合いが入ったようである。そして気持ちが相撲に表れていた。

 後半戦は連勝したが勢い任せの内容ではなく、地力が付いた結果勝ち越し、そして二桁勝利につながったと見ている。好内容だったのは玉鷲戦である。玉鷲の突きをあてがって凌ぎ続け、土俵際に詰まったがのけぞりながらも右に突き落として土俵下にかわした。そのまま土俵を割らないあたりは力が付いてきているということである。また体重も139キロと少しずつ増えてきており、押されにくくなってきた。

 来場所は番付を上げるが二場所続けての勝ち越しといきたい。次の目標は部屋頭である。所属の時津風部屋には元大関の正代がいる。年齢は33歳であり、ベテランの域に入ってきているが、まだまだ相撲が取れそうである。また東農大の先輩でもある。実績は言うまでもないが、今場所二桁勝ったことで番付を追い越す可能性が出て来たことは確かである。年齢的にもいずれは追い越さなければいけない力士と言える。また幕内定着は勿論、いずれは幕内後半の土俵を盛り上げる役割を期待したい。