2025年3月場所個別評価 玉鷲
今場所は西前頭7枚目だったが10勝5敗の好成績だった。黒星発進も2日目からは白星を重ね、前半戦は6勝2敗で折り返した。そして後半戦は11日目に勝ち越しを決めると12日目は5連敗中の霧島を押し出して3敗を守り、優勝争いを星一つ差で追走した。しかし13日目は美ノ海に敗れ、優勝争いから後退した。千秋楽は獅司を押し出し、旭天鵬以来となる40歳で幕内二桁勝利となった。
内容に関しては突き押し相撲に力強さがあった。そして伯桜鵬、尊富士、平戸海といった伸び盛りの若手力士を圧倒していた。特に素晴らしかったのが4日目の尊富士戦である。立ち合いでやや当たり負けし、押し込まれたものの下からあてがって押し返した。そして尊富士の引きに乗じて押し込み、間隔ができたものの左手を伸ばして押し倒した。勝因は尊富士の出足を止めたことである。後退はしたものの、土俵際までは押し込まれなかった。最後は引かせており、どちらが若手か分からないといった相撲だった。
また10日目の錦木戦は40歳とは思えない反射神経を見せた。錦木に左からいなされ、土俵際で踏ん張るも背中を見せる体制となり、絶体絶命だった。しかし錦木が左手で押し出そうとしたところを右へくるっと回って向き直り、バランスを崩した錦木はそのままの勢いで手を付いた。この動きはベテランの動きではない。稽古ができている証拠でもある。逆転劇なのだが、それにしてもなかなか見られない相撲だった。決まり手は「叩き込み」だが、錦木の体に触れておらず、苦し紛れの決まり手だったかもしれない。
残念だったのは13日目の美ノ海戦である。熱戦となり、軍配は玉鷲に上がったが物言いが付き、差し違いで美ノ海の勝ちとなった。もしこの一番に勝っていれば優勝争いに残っていた。また大の里と高安とは対戦しておらず、終盤の取組が変わっていた可能性がある。そうなれば優勝争いがまた違ったものになっていたかもしれない。個人的には大の里や高安との取組を観たかっただけにそれが少しだけ心残りである。
来場所は約2年ぶりとなる上位挑戦の場所となるが勝ち越しを期待したい。体は動いており、目標としている三役復帰も夢ではなくなってきた。また上位陣は星の潰し合いとなっており、割って入る余地が十分ある。そして三賞受賞となれば最高齢での受賞となり、三賞も貪欲に狙って欲しい。
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