2025年3月場所個別評価 千代翔馬
今場所は自己最高位タイの西前頭2枚目であり、久々の上位総当たりの場所となったが6勝9敗で負け越した。序盤は役力士相手に3勝2敗と好スタートを切った。5日目は豊昇龍を寄り切りで破り、初金星を挙げた。また33歳7か月での初金星は豪風(現押尾川親方)に次ぎ史上2位の年長記録となった。しかし翌日からは5連敗して7敗となり、勝ち越しに向けて後がなくなった。13日目は平戸海に押し出され、負け越しが決まった。
内容に関しては左を差しての相撲と投げ技で白星を挙げていた。やはり最大のハイライトは初金星をマークした豊昇龍戦である。立ち合いで大きく右に動いて右上手を取ると左を差し、左腕を返して寄り切った。取組後は「負けたら変化したと何年も言われるかもしれないけど、それでも勝ちたかった」と語った。私としては年齢が33歳であり、今後横綱との対戦がない可能性もあるので変化は理解できる。確かに変化が多い力士だが、横綱相手に変化を決めたのはそれだけで見事である。また8年前は白鵬や稀勢の里などに挑戦しており、その経験が生きた。当時は緊張したようだが、豊昇龍は年下であり、豊昇龍が7歳の頃から知っているようだ。よって横綱戦だからといって固くならなかったことも勝因と言える。そして12日目の豪ノ山戦は取り直しとなった。取り直しの一番は豪ノ山に右を差され、一気に前に出られたものの土俵際で左に回り込みながらの左上手投げで際どくねじ伏せた。体勢は豪ノ山有利だったが、懐の深さが生きた相撲内容だった。
来場所は番付を下げるが、今場所の経験を生かしたい。15日間を通して見ると前に出る圧力がまだ足りない。もう少し圧力が増せば変化などの思い切った相撲が生きてきそうである。今場所は負け越したとはいえ、豊昇龍を含めて役力士に勝っており、能力はある。あとは稽古で体を作り、地力を付けたい。次は新三役に向けて頑張って欲しい。
最近のコメント