祖父の背中を追いかけて 琴ノ若 入門前~幕下時代
9月場所は世代交代という意味で豊昇龍とともに琴ノ若にかかる期待は大きい。父は元関脇琴ノ若で現在の佐渡ヶ嶽親方であり、祖父は第53代横綱琴櫻というサラブレッドである。それでは琴ノ若を紹介したい。
琴ノ若は千葉県松戸市出身で佐渡ヶ嶽部屋所属であり、年齢は23歳である。地元の小学校を卒業後は親元を離れて埼玉栄中学へ進学した。当初は中学卒業後の大相撲入りを考えていたが、中学卒業時点では通用する自信が持てなかったため、埼玉栄高校に進学した。そして高校では3年次に主将を務め、実績を残し、在学中の2015年11月場所で初土俵を踏んだ。その後は2016年1月場所に序ノ口優勝を果たすなど順調に番付を上げ、序ノ口、序二段は1場所、そして三段目は2場所で通過。同年9月場所は幕下に昇進した。そして幕下では勝ったり負けたりの土俵が続いた。2017年3月場所は三段目に転落したが、1場所で幕下に復帰した。大相撲は番付社会ではあるが、ただ番付を上げればいいというものでもない。琴ノ若の3年近くの幕下の土俵はいわゆる下積みの期間だったと思う。経験を積みながら少しずつ力を蓄えていった。そして2018年9月場所は幕下上位となる東15枚目に番付を上げた。幕下上位では1場所負け越したものの、5場所で通過し、2019年7月場所に新十両に昇進した。また四股名を「琴鎌谷」から父親の現役時代の四股名である「琴ノ若」に改名した。祖父、父親、子と三世代で関取になった例は史上初である。
印象に残っている相撲は2019年5月場所12日目の美ノ海である。この場所の琴ノ若、当時の琴鎌谷は3連勝スタートも3連敗し、星が五分になった。しかも3敗目が11日目であり、原則なら13日目以降が7番相撲だが、十両昇進が懸かっているということで12日目に7番相撲となった。相手は十両の美ノ海であり、十両での土俵となった。また美ノ海は十両力士なので翌日以降も相撲が取れる。一方琴鎌谷は今場所最後の相撲である。能力だけでなく、琴鎌谷の精神力が問われた一番でもあった。しかし相撲は落ち着いていた。突き合いから右へいなすと相手がバランスを崩し、体を寄せてそのまま押し出した。相撲を観た限りでは緊張しているようには全く見えなかった。このあたりはやはり祖父の琴櫻の血が成せる業かと感心したものである。
続く
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