2021年7月場所個別評価 豊昇龍

 西前頭5枚目だったが10勝5敗の好成績で初となる技能賞を受賞した。また入幕6場所目で自身初の2桁勝利となった。前半戦は5勝3敗で折り返した。そして後半戦は11日目に正代を寄り倒しで破り、勝ち越しを決めると千秋楽は北勝富士を叩き込みで破り、白星を2桁に乗せた。

 内容に関しては相手によって右四つの相撲と押し相撲を使い分けていた。押し出しで3番勝っており、押されなくなっているだけでなく、押す力が付いてきている。そしてどちらかと言えば得意としているのが右四つの相撲と足技、そして投げ技である。7日目の宝富士戦は立ち合いから宝富士が左を差し、宝富士の方が有利な体勢に見えた。しかし豊昇龍は足技で上位陣を倒した実績があり、足技への恐怖からか宝富士の腰が引けている。一方豊昇龍は内掛け、外掛けで宝富士を揺さぶると内掛けのタイミングで下手投げを打ち、最後は外掛けで仕留めた。お見事としか言いようがない。11日目の正代戦は立ち合いから前に出られるも右上手を取り、逆に寄り返した。そして正代も左を差し、土俵際の投げの打ち合いに持ち込もうとした。しかし豊昇龍はその誘いに乗らなかった。相手の右の腰に体を寄せながら外掛けを繰り出し、最後は寄り倒した。土俵際なのでどうしても土俵の外に出すという選択をしてしまうところだが豊昇龍は冷静だった。足技を掛けながら相手を転がすという選択をした。おそらく正代の頭には全くなかったと思う。これは力量ではなく、相撲センスという部分である。やはり只者ではない。そして13日目の逸ノ城戦は立ち合いからすぐに左上手を取られ、万事休すかに見えた。体重差は70キロである。しかしそれでも粘り、左上手は切れないが右差しは許さない。最後は寄られるも左からの突き落としで抵抗した。軍配は逸ノ城に上がるも物言いが付き、同体取り直しとなった。取り直しの一番も逸ノ城にすぐに左上手を取られ、今度はがっぷり四つになった。そして豊昇龍が左を巻き替えて懐に入ると体を開いての渾身の下手投げで巨漢を転がした。取組後息が上がっていたがものすごい執念である。やはり精神面は叔父の元横綱朝青龍を受け継いでいる。悪い部分は受け継いでほしくないが・・・。何はともあれ、豊昇龍に魅了された人は私を含め、多かったのではないだろうか。着実に力を付けてきているのは間違いない。

 9月場所は自己最高位を更新し、東前頭筆頭となった。初日から連日上位力士との対戦となる。厳しい前半戦にどれだけ白星を挙げられるかが鍵となりそうだ。そして課題はやはり増量である。現在131キロだが、あと10キロくらいは増やしたい。スピードが維持できれば自ずと番付は上がってくるはずである。あとは新三役で勝ち越した明生との稽古で力を付けていきたい。年齢も22歳と若く、世代交代という意味でも更なる台頭を期待したい。