2021年5月場所個別評価 千代大龍

 今場所は西前頭14枚目だったが10勝5敗の好成績だった。3連勝スタートも4日目から連敗。しかし6日目からは4連勝し、9日目までは優勝争いに加わっていた。その後連敗し、優勝争いからは脱落するも12日目は隠岐の海を引き落としで破り、勝ち越しを決めた。そして千秋楽は立ち合いで右に変化する注文相撲で阿武咲に勝ち、4年ぶりの二桁勝利を達成した。

 立ち合いの強烈なカチ上げと突き押しを得意としているが今場所は右上手を取りに行く相撲が多かった。年齢は32歳であり、カチ上げの威力も落ちてきた。それに伴い、最近は前頭二桁の番付に低迷している。また突き押しが得意とはいえ、左四つでも相撲が取れ、器用なタイプの力士である。今後に向けてもこの選択は間違っていないと思う。

 3日目の明瀬山戦は突き合いから左を差すと一気に前に出て寄り切った。7日目の琴恵光戦は立ち合いから右上手を取って左四つに組み止めた。そして相手の左下手を切ると頭を付け、機を見て一気に寄り切った。千秋楽の阿武咲戦は確かに立ち合いの変化は良くない。しかし今場所は立ち合いの変化はそれまで一度もなく、引き技自体も以前ほど多くない。どうしても勝ちたいという執念だったと思う。負けた阿武咲は負け越しが決定し、残念そうな表情をしていたが・・・。

 7月場所は西前頭4枚目という地位となった。2年ぶりの上位挑戦の場所となる。さすがにカチ上げと突き押しだけでは分が悪いので相撲にひと工夫が欲しい。また自ら廻しを取りに行けば瞬発力はあり、一気に寄って勝つセンスは持っている。そして体重185キロの巨体なので軽量・小兵力士相手には体力勝負に持ち込めるのもメリットである。相撲の幅が広がったのは間違いなくプラスだと思うのでひと暴れを期待したい。